2013年1月17日木曜日

スペル

スペル
Drag Me to Hell
2009年 アメリカ 99分
監督:サム・ライミ

銀行の融資係で昇進の機会を切望しているクリスティン・ブラウンは自分にも決断ができるということを支店長に見せるために老いたガーナッシュ夫人の返済延期を拒絶し、なおも懇願するガーナッシュ夫人を警備員を使ってつまみ出すので、ガーナッシュ夫人から呪いをかけられることになる。夫人の呪いによってクリスティン・ブラウンの前には怪しい影が現われ、迷惑千万な物理現象も出現し、心霊能力者の言葉からラミアが自分につきまとっていることを知ったクリスティン・ブラウンはガーナッシュ夫人の家を訪れて和解をしようと試みるが、すでにガーナッシュ夫人はこの世になく、三日ののちには自分もまたラミアによって地獄に引きずり込まれることを知ったクリスティン・ブラウンはラミアに生贄をささげたり、降霊術でラミアに罠をかけたり、呪いを移し替えようとたくらんだり、と必死になってあらがうが、この手の映画のヒロインの例にもれず、分相応の最期を遂げる。
いかなる期待も裏切られない。すでに冒頭、ユニバーサルのロゴが古いのである。きわめて古めかしいフレームを使った正統派のホラー映画で、あまりにも古典的な脚本にはキャラクターにもシチュエーションにも、余計なものは一切含まれていない。古い蔵から引っ張り出してきたようなこの純正100パーセント、ホラー演出三割増しのマスターピースのようなしろものにサム・ライミはきわめてサム・ライミ的な味付けをほどこし、恐怖の向こう側にほどよく笑いを仕込んで観客の呼吸をつかみ取る。視覚の面でも音響の面でもよくデザインされた、つまり、きわめてよくできた映画だが、磨きに磨いた骨董品を見せられているような気分になる。 





Tetsuya Sato