2012年12月6日木曜日

レボリューショナリー・ロード

レボリューショナリー・ロード
Revolutionary Road
2008年 アメリカ/イギリス 119分
監督:サム・メンデス

第二次大戦後、フランクとエイプリルはバーで出会い、結婚して一児をもうけるとレボリューショナリー・ロードという嫌味な名前の郊外住宅地に家を求め、そこで二人目の子供が生まれ、結婚生活の七年目の夏を迎える。フランク・ウィーラーは電子機器を扱うノックス社の社員で会社までは自家用車と鉄道を乗り継いで通勤し、会社の秘書を相手になれた手つきで浮気をする。エイプリル・ウィーラーは専業主婦をするかたわら、女優への夢を抱いて市民劇団の立ち上げに参加している。だが舞台は失敗に終わり、夫のしつこい慰めに苛立ち、自分のまわりがひどく虚しいものとして映るようになり、理想と現実のはざまの暗がりに転がりながら、現実を打破するアイデアを思いつく。つまり家を売却して一家を挙げてパリに移り、そこで自分が国際機関に職を得て夫を助け、夫はどこにあるのかわからない才能を開花させるために何かをする、という空想的な計画を立てて夫を説得、夫は軽率にも計画に乗り、自分たちはパリに移住する、とそこら中に吹聴するが、間もなくフランク・ウィーラーに昇進の可能性が生まれ、さらにエイプリル・ウィーラーの妊娠が判明、計画は妊娠を理由に中止となり、そこへ服を着た絶望が現われて無礼な調子で非難を繰り返すので、夫婦のあいだに決定的な亀裂が入り、最終的な段階を迎える。
表現はきわめて洗練されており、言葉数の少ない画面にも膨大な情報が織り込まれ、場面の流れはリズミカルで心地よい。隣人や同僚の扱い、夫婦の視野と子供たちとの関係なども心理的な次元でたくみに消化されており、相変わらずうまいと感心させられた。ただ、うんざりするような現実をあまりにも洗練された表現で包み込むと、表現自体に非人間的な冷たさが見え、人間的な問題に対する作り手の誠実さに疑問が生まれる。
小市民があたりまえに抱える不幸をことさらに暴き立てて、それで何が面白いのか。ケイト・ウィンスレットは絶望的な主婦を熱演し、レオナルド・ディカプリオも悪くない仕事ぶりを見せている。そしてこの二人の喧嘩の場面というのが監督の腕がいいからなのか、それとも監督本人の経験の反映があるからなのか、不愉快なほどリアルにできていて、似たような経験が少なからずあるこちらとしては、ホラー映画を見ているようで恐ろしかった。 


Tetsuya Sato