2012年12月25日火曜日

グエムル 漢江の怪物

グエムル 漢江の怪物
Gwoemul
2006年 韓国 120分
監督:ポン・ジュノ

アメリカ軍基地から廃棄された薬剤が漢江に流れ込み、それから数年後、市民でにぎわう河川敷に怪物が現われて虐殺を働き、さらに売店を営む一家から長男の娘をさらう。怪物はウィルスに汚染されていたという理由で一家を含む目撃者は感染を疑われて隔離されるが、一家は結束して脱出を果たし、地図と武器を手に入れて長男の娘の救出に行く。
怪物の問題は間もなくウィルスの問題に横滑りし、対処にあたる権力機関もまたこの横滑りに振り回され、つまり権力機関もまた横滑りするので、怪物とまじめに戦おうとするのは非力な主人公一家だけである。父親、長男、次男、長女、孫娘はそれぞれにキャラクターがよく造形され、非力な上に間抜けなせいで余計な手間がかかる部分もふがいなく横滑りしていく背景にうまく結合させて消化している。随所に盛り込まれたコミック演出の呼吸がいいし、冒頭、日常の風景のなかに怪物が出現し、いきなり恐慌状態が出現する描写は冴えている。作家性は明確であり、映画としての質も高い。そして怪物の造形も悪くないし、CGもそれなりにきれいにできているし、よく動いていると思う(重さの表現にやや疑問を感じたが)。手間のかかった立派な作品である。ただ、いわゆるモンスター映画ではない、というより、そもそもそういう映画では全然ないので、生理的な部分で古典的な図式を求めると『真昼の決闘』を見たジョン・ウェインのようなことをつい言いたくなる、というのがたぶんこちらの問題であろう。




Tetsuya Sato