2012年12月2日日曜日

スカイフォール

スカイフォール
Skyfall
2012年 イギリス/アメリカ 143分
監督:サム・メンデス

シリーズ誕生50周年。MI6のイスタンブール支局が襲撃を受けてテロ組織に潜入している工作員のリストが奪われ、ボンドは犯人の追跡を命じられて犯人を列車の屋根に追いつめるが味方の弾丸を受けて死亡、リストは公表されてMI6にはMに対する恫喝が届き、続いてMI6の本部が爆破されると死亡した先で酒浸りの日々を送っていたボンドがロンドンに現われて任務に復帰し、リストを奪った犯人を求めて上海へ飛び、犯人が残した手がかりを追ってマカオへ飛び、洋上に唐突に出現する軍艦島で事件の黒幕シルヴァに遭遇すると、このシルヴァを捕えてロンドンへ運び、しかしすべてはシルヴァの思惑どおりであったので、シルヴァはMI6から逃亡してMの命を狙うので、ボンドはMを確保してスコットランドの生家に逃れ、そこに罠を仕掛けて一味を待つ。
冒頭、イスタンブールのバザールの屋根で繰り広げられるバイクの追撃戦、それに続く列車上でのアクションがすごい。上海と香港のアーティフィシャルな描写にはそれぞれの都市の空気がしっかりと織り込まれ、クライマックスはスコットランドの低地という地味な背景を使いながら、その盛り上がりには息を呑む。そしてハビエル・バルデムは頭があさっての方向に吹っ飛んでいるし、今回のボンドガール筆頭はなんとジュディ・デンチだったりするのである。ハビエル・バルデムの妄執はダニエル・クレイグのなにやらひそやかな憧憬と複雑にからみ、ほとんど三角関係の様相を帯びながら映画は原点への回帰を目指して進んでいく。終盤に発生するのはボンド自身が口にするように事実上のタイムスリップであり、だからこそ『ゴールドフィンガー』が引用されるのである。これは卓越したボンド映画であり、同時に壮絶な恋愛映画でもある。サム・メンデスの緩急を心得た演出が実に心地よい。 


Tetsuya Sato