2012年11月26日月曜日

スピオーネ

スピオーネ
Spione
1928年  ドイツ 144分
監督:フリッツ・ラング

諜報部がその無能によってメディアに叩かれていた頃、ハーギ銀行の内部に秘匿された巨大な諜報機関を率いる男ハーギ(横顔がレーニン、顎ひげはトロツキー、正体は『メトロポリス』のロートヴァング)は日本と交わされる秘密条約の条文を盗もうと陰謀を進め、女スパイのソーニャを使って諜報部の有能そうなスパイ326号を篭絡するが、意外にもソーニャと326号は恋に落ち、ソーニャが任務の都合で唐突に姿を消すと326号は痛烈な恋の痛みを感じてすぐさま酒におぼれるが、そこへ現われた日本諜報機関の長、松本博士は326号にソーニャの正体を告げ、言った舌の根も乾かないうちに別の女スパイを自分の家に引き入れる。同じ頃、ソーニャに情報を売った参謀本部の大佐は追及を受けて死を選び、大佐が受け取ったポンド紙幣が続き番号であることに気づいた326号は紙幣の出所を確かめるべく出先から諜報部に打電するが、電報の内容はカーボンによって写し取られ、諜報部長には偽の情報が渡される。ソーニャの独占をたくらむハーギは326号にも偽の情報を与え、列車事故を偽装して殺害しようと試みるが、326号は事故を生き延び、そこへハーギを裏切ったソーニャが駆けつけ、ハーギの陰謀が明るみに出る。しかしソーニャはハーギによって誘拐され、ハーギ銀行に駆けつけた警官隊はハーギの秘密機関の入り口が見つけられず、そうするうちにソーニャには死の手が迫り、銀行の建物にはガスが充満する。
極小のスパイカメラ、消えるインク、秘密機関の得体の知れないコンソール、同じく得体の知れない伝言装置といった妙なギミックが登場するし、後半に入って人物関係が煮詰まってくるとサスペンスもいちおうの盛り上がりを見せるものの、エスピオナージュという題材を扱っている割には登場人物がいまひとつ賢さに欠け、いまひとつきちんと仕事をしていない。ロマンスが前へ前へとしゃしゃり出て、326号はソーニャとの恋にほとんど最初から最後までもだえているし、敵方のハーギも嫉妬を捨てきれないし、松本博士も女にだまされ、失敗の責任を取って切腹する。情報戦を扱っている、という観点からは『M』のほうが好ましい。 



Tetsuya Sato