2012年11月25日日曜日

メトロポリス

メトロポリス
Metropolis
1927年  ドイツ 118分
監督:フリッツ・ラング

高層ビルが立ち並ぶ未来都市メトロポリスでは労働者は地下で暮らして十時間の交替労働に呻吟し、一方、支配階級の子弟はスポーツをしたり女性と戯れたりして暮らしている。そしてメトロポリスの支配者ジョー・フレーダーセンの息子フレーダー(つまりフレーダー・フレーダーセン)がその日も永遠の園と呼ばれる場所で女性と戯れていると、そこへ地下都市の女性マリアが労働者の子供たちを引き連れて現われる。フレーダーはマリアに強く惹きつけられ、その正体を知るために跡を追うが、途中、機械の爆発事故を目撃して激しく狼狽し(労働者たちがまるでごみのように)、町の中心にそびえるバベルの塔を訪れて見てきたことを父親に伝える。父親のジョー・フレーダーセンは事故報告を息子から受けたことで側近ヨザファートに怒りを覚え、さらに別のことでも怒りを覚えてヨザファートを解雇する。ヨザファートは解雇されたことで狼狽して自ら命を絶とうとするが、フレーダーによって思いとどまるように説得され、このことでフレーダーとヨザファートのあいだに信頼が生まれる。フレーダーはヨザファートとの再会を約して地下へ進み、そこで労働者11811号と出会って服を交換し、労働者の服を着たフレーダーは地下都市のさらに下にある2000年前のカタコンベへ足を踏み入れ、そこでマリアと再会する。マリアは我慢の限界に達した労働者たちに平和を求め、間もなく媒介者が現われると予言するが、その媒介者こそがフレーダーなのであった。これよりも少し前、メトロポリスの支配者ジョー・フレーダーセンは、労働者の不穏な動きについて助言を求めるために事実上のマッド・サイエンティスト、ロートヴァングの家を訪れるが、その家で目にしたものはジョー・フレーダーセンの亡き妻を悼む巨大な彫像であった。ロートヴァングはジョー・フレーダーセンの恋敵であり、ジョー・フレーダーセンがその事実をおおむね忘れていた一方で、まったく忘れていないロートヴァングは死んだ女を機械人間としてよみがえらせようとたくらんでいた。それはそれとして、この二人は地下へもぐってカタコンベでの労働者の集会を目撃し、一計を案じたジョー・フレーダーセンはロートヴァングに指示を与え、ロートヴァングはマリアをさらって機械人間にマリアの顔を写し取る。マリアの顔を与えられた機械人間はみだらな表情を浮かべてジョー・フレーダーマンに肩を寄せ、その様子を目撃したフレーダーは衝撃のあまり病の床につく。そして病床で悪夢にうなされるあいだに偽のマリアは七つの大罪を背負って活動をはじめ、メトロポリスの歓楽街ヨシワラに現われて半裸の姿で踊り狂うので、上流階級の子弟までがその狂乱に飲み込まれる。続いて偽のマリアは労働者のなかへ送り込まれ、そこで暴動を扇動するが、これはジョー・フレーダーセンが弾圧の理由を得るためであった。偽のマリアの扇動で労働者たちの暴動が始まり、機械が破壊され、労働者住宅のある地下都市では浸水が起こる。本物のマリアはロートヴァングの家から逃げ出して地下へ急ぎ、水に浸る町から子供たちを救い出し、そこへ現われたフレーダー、ヨザファートとともに地上を目指すが、このとき、すでに偽のマリアはヨシワラへ戻って乱痴気騒ぎの中心となり、マリアの扇動で子供たちを奪われたと思い込んだ労働者たちは本物のマリアを処刑しようと襲い掛かる。だが労働者たちは偶然から偽のマリアを捕らえ、偽のマリアは火あぶりにされて機械人間の正体を現し、一方、本物のマリアは窮地を逃れ、フレーダーは媒介者として父親と労働者たちの手を結ぶ。
いささか通俗的なところへ加えてメッセージが多い内容になっているが、フリッツ・ラングがストーリーやメッセージにどの程の度関心を抱いていたかは疑問である。それよりも目につくのはメトロポリスの威容であり、精密なストップモーション・アニメーションの成果であり、三十年代に足をかけたドイツでなければ誰も思いつけないような未来派の競技場であり、異様な機械にまとわりつく労働者たちの姿であり、機械人間の変身プロセスであり、なによりもヨシワラにおける偽マリアの狂乱である。クライマックスへ向かってひた走るモブシーンがまたものすごく、見ていて頭がくらくらした。





Tetsuya Sato