2012年11月22日木曜日

イン・マイ・カントリー

イン・マイ・カントリー
Country of My Skull
2004年 イギリス・アイルランド・南アフリカ 104分
監督:ジョン・ブアマン

1994年の南アフリカ。アパルトヘイトの実態を明らかにするための公聴会が各地で開かれ、被害者が語り、恩赦を求める加害者もまた事実を語り始める。
サミュエル・L・ジャクソンはワシントンポストから派遣されたアフリカ系アメリカ人で、罪を求める代わりに恩赦を与える真実和解委員会の姿勢に反発し、本国に扇情的な記事を送る。ジュリエット・ビノシュはオレンジ自由州出身(つまりボーア人)で、家族とのあいだに政治的な違和感を覚えている。
ジョン・ブアマンは立場を決めて問題を声高に叫ぶのではなく、適当な距離感を保ちながら証人たちの証言を淡々とはさみ、そのあいまに主人公ふたりが多数のジャーナリストに混じって公聴会を追いかけながら取材を続け、反発したり、親密になったり、という様子をまた淡々と描き込む。暴力的な表現は回避され、証言に現われる事件は再現されることがなく、まれにその痕跡のみが示される。代わりに証人が語る言葉は雄弁になり、「どんなジャッカルだってヒツジにしないようなことを、あなたがは人間にやったのだ」と警官たちを指差すと、警官たちはただ恥じ入るしかすることがない。全編を通じてジョン・ブアマンは確実な筆力を発揮し、場面の流れはよどみなくて心地がよい。そして微妙な心理描写には思わずはっとさせられる。サミュエル・L・ジャクソンとジュリエット・ビノシュに非常によい仕事をしており、特にジュリエット・ビノシュは魅力的。 





Tetsuya Sato