2012年11月18日日曜日

戦場の小さな天使たち

戦場の小さな天使たち
Hope and Glory
1987年 イギリス 113分
監督:ジョン・ブアマン

1939年の9月から翌年の夏の終わりまで、およそ1年間にわたる英国の市民生活を主として少年の目を通した形でスケッチ風につづっている。対独開戦を告げるラジオ放送、唐突に吹き鳴らされる空襲警報、庭先に作られた防空壕、募兵所に群がる男たち、疎開列車、街の空に点在するバルーン・エプロン(敵機の侵入を妨害する風船)、校長先生の奇怪な祈り(ヒトラーに悪夢をもたらして安眠を奪いたまえ)、ロンドン空爆(爆弾がエバンス夫人の家に落ちますように)、焼け跡を占拠した悪ガキの群れ、ぼくが知っている汚い言葉、爆風で吹き飛ぶ窓ガラス、爆風に苛まれる「ぼくたち」、ロンドン上空で展開する「英国の戦い」、撃墜されたMe109、パラシュートで降下してくるドイツ人パイロット、パラシュートの絹に群がるご近所の主婦、ジルバ・パーティ(15歳の姉のふくらはぎに弟が絵の具でストッキングのシームを描き込んでいく)、ビギン・ザ・ビギン、爆撃でお母さんを失った女の子、姉の夜遊び、姉と付き合っているカナダ軍の伍長、入隊した父親が持ってきたドイツ軍のジャムの缶詰、衣料品の交換所、肌を見せた少女たち、ぼくはエッチなことにも関心がある、ピクニック、お母さんの大人の悩み、火事(戦争中でも火事は起こります)、溶けてしまった鉛の兵隊、おじいちゃんの家、姉の妊娠、ぼくのおじいちゃんの四人の娘と弦楽四重奏、夏中続く川遊び。
とにかく丁寧で手抜かりのない場面作りとコミカルな演出で、戦争という異常事態がもたらした異様な興奮と緊張、そしてその瞬間に少年が味わった奇妙な幸福感を巧みに伝えている。傑作。 
戦場の小さな天使たち [VHS]

Tetsuya Sato