2012年11月15日木曜日

エクソシスト2

エクソシスト2
Exorcist II: The Heretic
1977年 アメリカ 118分
監督:ジョン・ブアマン

前作の事件から4年が経過し、リーガンは成長している。母親の秘書とともにニューヨークのペントハウスで暮らして、精神科医に通っている。医師はリーガンの心の傷を気にしているようだが、患者本人は治療の意味を認めていない。そこへイエズス会のラモント神父が現われる。メリン神父の弟子で、ブラジルで悪魔祓いに失敗し、いささか自信を失っている。ヴァチカンからメリン神父の死因を調べるように命令されていて、まずリーガンの精神科医を訪れたのであった。医師の部屋にはランプを2つ並べた奇妙な装置が用意されている。シンクロナイザーと呼ばれるその装置を使うと、二人の人間の脳波を同調させて、一方の心を他方が覗き込めるようになる。ラモント神父はその装置を使った実験によって少女リーガンの心に善と悪が存在することを知り、加えてその悪は翼を備えた巨大な悪であることを知る。つまり悪にはパズズという名があり、4年前に祓われた筈の存在はまだリーガンの内部に巣食っていた。ラモント神父とリーガンはパズズの記憶を通じてメリン神父の過去へ、30年前のアフリカの事件へ結び付けられていく。そこでは善良なる存在が大いなる悪を呼び寄せていた。そしてリーガンは内面における対立を自覚し、ラモント神父は悪魔の翼に触れて信仰を揺るがせながらリーガンを救うためにアフリカへ旅立ち、そこで悪の連鎖を切り離す「よいイナゴ」と出会うのである。多くの場面が幻視された世界として描かれ、おそらく同じだけの時間が幻視された世界を現実のうちになぞり直すことに費やされている。なぞり直していくその手つきに見ごたえがある。
いちおう「2」を名乗ってはいるし、リンダ・ブレアーがリーガン役で出ているけれど、ウィリアム・フリードキンの『エクソシスト』とはほとんど関係がない。監督のジョン・ブアマンがエクソシズムにほとんど関心を払っていないからで、 代わりにシンプルな善悪の対立、超能力、共感といった題材を持ち込み、媒介となるテクノロジーを持ち込むことで事実上のSF映画にしてしまっている。象徴表現や色彩設計などは『未来惑星ザルドス』から発展してきている部分が多いのではないだろうか。壮大な空間処理、イナゴの猛襲を含むよくできた特殊効果など見所も多い。傑作である。 





Tetsuya Sato