2012年11月10日土曜日

アメリカン・ギャングスター

アメリカン・ギャングスター
American Gangster
2007年 アメリカ 157分
監督:リドリー・スコット

1968年、ながらくハーレムを取り仕切ってきたバンピーが故人となると、その運転手で護衛で集金係であったフランク・ルーカスは自らのたくわえを吐き出して東南アジアからヘロインを直輸入するビジネスに乗り出す。フランク・ルーカスが売り出した新商品ブルーマジックはその高品質と低価格で瞬く間に非合法薬物市場を席巻し、フランク・ルーカスは成功して大物となり、マフィアとの関係を確立する。一方、ニュージャージーの警官リッチー・ロバーツは賭博の胴元を追っていてたまたま見つけた印のない百万ドルを正直に警察に届けたために仲間内で疎まれていたが、麻薬捜査班の主任に任命されて正直者の警官を集め、情報収集に励むうちにフランク・ルーカスの存在に気づく。
追うほうも追われるほうも、どちらもまじめで正直に働き、それぞれに向上心をもってそれぞれの困難に立ち向かうという『プロジェクトX』みたいな話である。最後には双方の『プロジェクトX』が合体して腐敗警官撲滅のための『プロジェクトX』に変形する。というわけで事実上の悪役は腐敗警官のジョシュ・ブローリンということになり、もちろん分相応の最期を遂げることになるのである。
精密に再現された70年前後の風俗がよい仕上がりで、それを背景にデンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウがともに非常によい仕事をしている。二人の演技は見ごたえがあった。リドリー・スコットの演出は(ある意味いつもながらの)平板さが少々こたえるものの、全体的なカットの短さに助けられてだれ場を作るには至っていない。久々に見たアーマンド・アサンテはすっかり老人になっていたが、さすがになかなかの風格であった。ちなみに中盤、デンゼル・ワシントンが部屋に飾った恩人バンピーの写真を見て婚約者のライマリ・ナダルがキング牧師かと訊ねる場面があったけど、実はわたしもその瞬間、キング牧師だったかな、と考えていた。70年前後で黒人で立派な顔、というとそういう反応になるのである。こういう刷り込みというのはなかなかに根が深いと感心した。 




Tetsuya Sato