2012年10月25日木曜日

王女メディア

王女メディア
Medea
1969年 イタリア 110分
監督・脚本:ピエル・パオロ・パゾリーニ

エウリピデスの『メディア』の翻案。第一部。まずケンタウロスがそれまでのお話を説明し、成長したイアソンはイアルコスを訪れて伯父に王位の返還を求めるが、伯父はその条件として金羊毛の皮を要求し、そこでイアソンは遠くコルキスを訪れて金羊毛の皮とコルキスの王女メディアを奪う。ところが伯父は王位の返還を拒み、イアソンはメディアと同衾する。第二部。十年後。まずケンタウロスがメディアを古代の女として位置づけ、イアソンはコリントスの王女との結婚をたくらむので、イアソンに捨てられたメディアはコリントスの王女を魔法で殺し、イアソンとのあいだに出来た二人の子供を火に投げ込み、恐れを抱くイアソンに向かって状況は回復不能であると告げる。
メディアが「古代の女」であり、これにイアソンが現代や合理性として対置されているとすると、最大の欠陥はパゾリーニの趣味にあって、つまりパゾリーニが描くこのイタリアの男たちはいつものように田舎じみていて、現代や合理性を表わしているようにはとうてい見えてこないのである。ただの浮気男というところか。メディアも格別、魔女には見えない。どちらもひどく空疎なのである。結局、イアソンにしてもメディアにしても何かをしているように見えないので、だから両者の関係がそれほどこじれているようにも感じられない。独りよがりの話法と演出そのもののボルテージの低さが原因であろう。ロケ地の選択や衣装のデザインには目を見張るものがある一方、撮影は全体に素人臭くてロケ地の選択や衣装のデザインを生かしていない。 



Tetsuya Sato