2012年10月23日火曜日

奥様ご用心

奥様ご用心
Pot Bouille
1957年 フランス・イタリア 118分
監督:ジュリアン・デュヴィヴィエ

ジェラール・フィリップ扮するオクターヴ・ムーレは南仏からパリへ出てきてショワズル通りのブルジョワが住むアパートに下宿し、エドワン夫人が経営する流行品店ボヌール・デ・ダムに職を得る、と言う間もなく同じアパートの三階に住むジョスラン家の次女に粉をかけ、隣の主婦にも粉をかけ、二階に住む家主のヴァブル家の長男の妻にも粉をかけ、もちろんエドワン夫人にも粉をかけ、ジョスラン家の次女ベルトがヴァブル家の次男に嫁ぐとそれを早速自分の部屋に引きずり込んでよろしくやる。
エミール・ゾラ『ごった煮』の映画化である。かなり込み入った原作を大幅に刈り込み、それでも要所はしっかりと押さえて話をつないでいく力量はたいしたものだが、結果として出現する状況の安易な展開を、なにしろ主人公がジェラール・フィリップなので、というその一点で説明するという無条件の割り切りが平然とおこなわれており、これは、なにしろ主人公がジェラール・フィリップなので、無条件の説得力を持つという点で観客に反論を許さない強さがあるものの、そして鉄の女エドワン夫人にダニエル・ダリューを当てることで適当に弱くしておく抜け目のなさも憎めないが、だからといって受け入れられるものではなかろう、と思うのである。ともあれ、ジェラール・フィリップのオクターヴ・ムーレはそれらしかった。第二帝政時台のパリのアパルトマンの描写は興味深い。 


ごった煮 (ルーゴン・マッカール叢書)
Tetsuya Sato