2012年10月17日水曜日

居酒屋

居酒屋
Gervaise
1956年 フランス 112分
監督:ルネ・クレマン

足の悪いジルヴェーズは帽子屋のランチエとともにパリへやってきたが、所帯は貧しく、それなのにランチエは遊んでばかりで働かない。間もなくランチエは娼婦と出奔してしまうので、ジルヴェーズは洗濯女となってこどもを養い、やがて屋根葺き職人のクポーと知り合って結婚する。ジルヴェーズの夢は店を借りて自分の洗濯屋を開くことにあった。だから爪に火をともすようにして小金をためていたのであったが、まさに店を借りようとした瞬間、クポーが屋根から落ちて重症を負う。貯金は治療費で消えてしまうが、善良な共産主義者の鍛冶屋から金を借りてジルヴェーズはついに自分の店を持つことになる。だがこの時、すでにクポーは怠け癖をつけて昼間から酒を飲むようになっていた。
エミール・ゾラ『居酒屋』の映画化である。で、このあと、ランチエが戻ってきてクポーと一緒になってジルヴェーズからむしりまくり、ジルヴェーズは転落の坂道をごろごろと転がり落ちていくのである。結婚式の場面、宴会の場面などはすばらしく躍動感のある見せ場になっている。視覚的にはていねいにつくられた映画だし、一級品としての格を備えているが、ただ惜しいことに後半のごろごろ部分が少々弱い。原作の方がもっと恐ろしいのである。ナレーションをジルヴェーズの一人称にしてあるけれど、その割には叙述の視点がはっきりしないというあたりも、もしかしたら欠点かもしれない。
Tetsuya Sato