2012年9月15日土曜日

スキャナー・ダークリー

スキャナー・ダークリー
A Scanner Darkly
2006年 アメリカ 100分
監督・脚本:リチャード・リンクレイター

麻薬捜査官「フレッド」は同僚や上司の前では「スクランブルスーツ」をまとって正体を隠し、潜入捜査のために麻薬中毒者「ボブ・アークター」になると偽装を解いて正体を現す。「ボブ・アークター」は自宅で麻薬中毒者たちと擬似的な家庭を営んでいるが、麻薬捜査官「フレッド」は上司から「ボブ・アークター」を監視するように指令を受け、監視カメラがとらえた「ボブ・アークター」を観察するうちに「フレッド」と「ボブ・アークター」のあいだに乖離が生まれ、麻薬中毒の度合いも進んで脳が壊され、謎の更正施設に放り込まれる。
出演はキアヌ・リーヴス、ロバート・ダウニーJr.、ウディ・ハレルソン、ウィノナ・ライダー。70年代のディックとはどうも相性が悪いので『暗闇のスキャナー』は未読だが、映画の仕上がりはディックの作品の雰囲気をよく出していると思う。ふつうに撮影された映像をロトスコープで精密なアニメーションに仕上げ、観客の目の前に観客の常識とは異なる次元のリアリティを提示するという手法は、現実への強固な疑念と不信を表現する上で優れて独創的であり、ただ感嘆した。ということで映像作品としての質は非常に高いわけだけど、内容のみについて言うならば、やっぱり相性のほうはよろしくない。 





Tetsuya Sato