2012年9月29日土曜日

宇宙戦争(2005)

宇宙戦争
The War Of The Worlds
2005年 アメリカ 114分
監督:スティーブン・スピルバーグ

ニュージャージーの港湾労働者レイ・フェリエーは離婚歴があり、別れた妻は東部のエスタブリッシュメントと再婚している。子供たちとの面会の日、十代の息子と十歳の娘がフェリエーの家を訪れる。家のなかは散らかり、居間にはV8エンジンが置き去りにされ、食べる物はろくになく、別れた妻はフェリエーの冷蔵庫を開けて批判する。そして息子は反抗し、娘は意見し、噛みあわないまま仕事に疲れたフェリエーは床に入り、起き上がって外へ出ると空は暗雲で覆われている。激しい稲妻が地上を襲い、近所の十字路に穴がうがたれ、そこから恐ろしくもったいぶって三本足の戦争機械が出現し、光線兵器で逃げ惑う人類をなぎ払う。フェリエーは泡を食らって家へ戻り、子供たちを連れて町から逃れ、別れた妻の実家を目指して進み始める。
登場人物を取り巻く空気は常に不穏で緊張に満たされ、視野の片隅には気がつくといつも不気味な丘があり、その丘を乗り越えて不気味な戦闘機械が出現する。トム・クルーズは突発的な状況に投げ込まれた肉体労働者を好演し、視点はそこに固着して大局が見えることは一度もない。それだけに非力が際立ち、戦闘機械が放つ光線よりも、追い詰められた人間が放つ一発の銃弾のほうが恐ろしいし、侵略者たちが自滅したあとで再びそそり立つ階級差の壁も高く見える。視覚面でも音響面でもよく造形された見ごたえのある作品であり、原作と1953年版の幸福な融合がここにある。




Tetsuya Sato