2012年9月13日木曜日

ローラーボール(2002)

ローラーボール
Rollerball
2002年 アメリカ 97分
監督:ジョン・マクティアナン

未来。国家は消滅し、世界は企業によって支配されていた、という1975年版のリメイクである。ただしこれはSFではない。四半世紀前に頭に思い浮かべた薄っぺらで単細胞な世界はどこにも存在しないことを、我々はすでに知っているからである。我々の世界でもたしかに国家は消滅しているが、それはもっぱらソ連のことであって、世界というのはロシアから逃げ出した中央アジア諸国のことで、企業はもちろん支配しているけれど、表立ってではなくて、裏から役人にチップを払ってそうしているのである。だからローラーボールは全世界的な戦争代行ゲームではなくなっていて、ロシア・マフィアの頭目がラスベガス進出をにらみながら打っている騒々しい興行に過ぎないのである。そこへ食い詰めたアメリカ人がやってきて、高給につられて選手になって試合に飛び込み、なにやら八百長の存在に気がつくと、これがまた阿呆で純朴なものだから許せない、などと憤って騒ぎを引き起こすのである。最後に正義は貫徹されるが、興奮した民衆は国家の欺瞞に気づいて映画の観客にメッセージを伝えるのではなく、競技場の外へ飛び出してただ車をひっくり返すのである。
オリジナルと比べた場合、世界の複雑さに対してより正直になったという点で評価できる。でももしかしたら、ロシアの暴動か何かをテレビで見かけて、あれかっこいい、あれやってみようという乗りで作った映画なのかもしれないので、あまり前向きには評価できない。全体にリズム感が悪くて、試合のシーンも意味不明なショットが多すぎる。時間をかけていないのであろう。モンゴルからロシアへの夜間の脱出場面はノクトビジョンを通して撮ったかのように画面が緑色に輝いていたが、あれはポストプロダクションで加工したのだろうか。そうだとすれば長いだけで退屈だし、そうでないとすれば、危険な上に長くて退屈である。 




Tetsuya Sato