2012年8月9日木曜日

スターシップ・トゥルーパーズ

スターシップ・トゥルーパーズ
Starship Troopers
1997年 アメリカ 129分
監督:ポール・ヴァーホーヴェン

ハインラインの『宇宙の戦士』が映画化されると聞いて、やはりまず気になったのは強化スーツのことである。監督がポール・ヴァーホーベンだという話を耳にして、それで期待をする一方、スーツは出ないと聞いてちょっと心配になった。心配はしたが、あの原作がここまでさかさまになっているとは思わなかった。
映画の骨格になっているのは宣伝映画である。それもどちらかと言えば第二次大戦中の、それもドイツの宣伝映画である。アナウンサーの攻撃的で上ずった口調を要所要所に挟みながら、人類史上に名高いあの戦争という名前のお馬鹿の限りを尽くすというのがこの映画の目的なのである。そこにはすでに批判精神すら存在しない。傍観者の立場から人類の愚行を笑い者にするというただそれだけで、それ以上でもそれ以下でもない。そうでもなければスクリーン一杯に「一時間で死者十万人」などと出すことはできなかった筈である。というわけで我々は観客席で人類の元気で滑稽な所業をたっぷりと見物し、げらげら笑って帰ってくることになる(わたしたちも笑っていたし、近くにいたドイツ人のグループも笑っていた)。ここには戦争のエッセンスが詰まっているのだ。 





Tetsuya Sato