2012年8月25日土曜日

サイレント・ランニング

サイレント・ランニング(1971)
Silent Running
監督:ダグラス・トランブル

ダグラス・トランブルの監督第一作。予算面で相当に苦労した痕跡が見受けられるが、さすがと言うべきか、それでも視覚的には多分に満足できる仕上がりとなっている。
話は未来、地球の気温は年間を通じて24度にされ、病気も貧困も失業もなくなっている。そして自然もなくなっていて、森林はドームに収められて宇宙で保管されているのである。主人公ローウェルはそうしたドームを管理している宇宙船ヴァレーフォージの乗員で、理想主義に燃えながら地球再緑化計画の開始を今か今かと待ち受けている。ところがある日、森林管理の任を帯びた宇宙船団には帰還命令が下り、ドームは爆破するようにと指示される。指示にしたがって森林ドームは次々に爆破されていくが、その有様に我慢できなくなったローウェルは同僚を殺害して宇宙船を強奪、報告では船が損傷したと偽って土星の軌道の彼方へと逃走する。そしてロボットたちを従えて植物の世話にいそしんでいると、やがて救助隊が接近してくるのである。逃げ場を失ったローウェルは同僚殺害のことで激しく悔やみ、植物の世話をロボットに任せてドームを宇宙船から切り離し、自らは自爆してしまうのである。ラストシーン。たった一台の小さなロボットが如雨露を握って小さな木に水をやっている。そして最後の森を収容したドームは宇宙をどこまでもどこまでも遠ざかっていって、そこへジョーン・バエズの切々とした歌声が覆い被さっていくのである。
感動して頬を涙で濡らすか(昔のわたしだ)、それともフラワーピープルの悪夢だと言ってあざ笑うか(今のわたしだ)、どちらを選ぶかは見る人次第ではないかと思う。保証するが、視覚的には一見に値する映画である。




Tetsuya Sato