2012年7月21日土曜日

TIME/タイム

TIME/タイム
In Time
2011年 アメリカ 109分
監督:アンドリュー・ニコル


遺伝子改造で人間は25歳から先は歳を取らなくなり、その代わりに余命は一年となって、あとは流通している時間を一生懸命稼がなければ死んでしまう、という世界で、スラム街の住人ウィル・サラスは時間があり余っている富裕層の町から来た男から100年分の時間を受け取って、時間があり余っている富裕層の町へ出かけていくが、そこで時間監視局に目をつけられて追われるはめになり、時間があり余っている富裕層の町でもとりわけ時間があり余っている大富豪フィリップ・ワイスの娘シルヴィアをさらって時間があり余っている富裕層の町から逃げ出して時間が足りないスラムへ戻り、そこで時間を搾取されている人びとに時間を取り戻すためにフィリップ・ワイスの経営する銀行などを襲ってスラムの人びとに時間を配り、そうすると体制は物価を上げたり利率を上げたりしてスラムの人びとから時間を搾取しようとたくらむので、すっかり恋仲になったウィル・サリスとシルヴィアのコンビは時間があり余っている富裕層の町へ乗り込んでいってシルヴィアの父親に銃を突きつけ、シルヴィアの父親の金庫から百万年(百万円みたいだな)を盗むのであった。 
ロジャー・ディーキンスの撮影は見事だが、アンドリュー・ニコルの脚本、演出はほめられたものではない。『シモーヌ』などと同様、消化不良のアイデアを抱えてだらだらと話をつないでいる。少数を不死にするために多数に死をという体制があれば、その起源があるはずだがそのあたりを考えた気配はないし、時間が流通しているという設定も話だけでまともに考えた気配がないし、百万年(百万円みたいだな)盗まれただけで崩壊する体制というのはあまりにも脆弱で、そんなものは一年だってもたないであろう、などということはまったく心配していない。うるさいことはあまり言いたくないけれど、へたくそだから言いたくなるのである。それにどう考えていないにしても、どう見てもスラムがおとなしすぎる。どういう状況であれ、人間はもっと狡猾であろう。監督と同じように頭が悪いということは決してない。






Tetsuya Sato