2012年7月30日月曜日

インセプション

インセプション
Inception
2010年 アメリカ/イギリス 148分
監督・脚本:クリストファー・ノーラン


ターゲットを夢のなかに誘い込んで罠を仕掛け、秘密を盗み出すことを生業としている男コッブは日本人サイト―からの依頼で秘密を盗む代わりに思考の刷り込みをおこなうことになり、夢の設計士、鎮静剤の調合士などを招集して計画を練り、ターゲットを眠らせて用意した夢に誘い込み、罠をしかけながら夢の深層に向かって降りていくが、そもそもコッブには死んだ妻がいて、この妻に関する記憶がしばしば夢に投影され、投影されて現われた妻がコッブの仕事を邪魔する、という問題があり、そのあたりの真相が暴かれていくとミッションはなんとなく置き去りになって話はコッブのセラピーに移り、というよりももともとコッブのセラピーの話にたまたま、というか、無理矢理、という感じでミッションが乗っかっているような形になっていて、視覚的にはそれなりに面白いところがあるものの、見ているこちらとしては、いまさら自分の潜在意識と対決してもなあ、という感想が先に立ち、そこへ来て主軸があいまいなままクライマックスへともつれ込む悪い展開のせいで盛り上がりにも乏しいので、なにやら夢の構造だのメカニズムだの話をいろいろとしても、結局のところ、いまさら自分の潜在意識と対決してもなあ、という感想がまた立ち上がり、メカニズムの部分もバランスを崩した構造の上で滑り出すだけで、いっこうに面白みとなって現われない。
夢に実際的な形で目的を持ち込むことにそもそも無理があるような気がするし、夢自体を現実に近接した物理現象のなかで表現することにも違和感があり、最後まで収まりの悪い気持ちを味わっていた。明確な対立項を欠いたまま自己再確認に到達する過程は『メメント』を思い出させるが、『メメント』があのサイズだから成功していたとすれば、こちらはこのサイズなので失敗したのではあるまいか。長すぎる。






Tetsuya Sato