2012年7月26日木曜日

ペルセポリス

ペルセポリス
Persepolis
2007年 フランス・アメリカ 95分
監督・脚本:ヴァンサン・パロノー、マルジャン・サトラピ

パフレヴィー朝末期、少女マルジは両親とともにテヘランで暮らし、共産主義者で政治犯のおじたちを迎え、父親が秘密警察だという男の子を追いかけ回し、思春期を迎えた頃にイラン革命が起こって外出の先に着る服は黒一色となり、イラン・イラク戦争が始まり、家では闇市で手に入れてきたパンクのテープを聴いて踊り、近所の家が空爆され、学校では宗教の先生に喧嘩を売り、これではまずいと気がついた両親がウィーンの語学学校へ送り出すと、ヨーロッパ的なものに出会って、というか、ドイツ的愚かしさに遭遇して戸惑いを覚え、それでも友達を作り、夜のウィーンを徘徊し、恋に破れ、なぜかホームレスを経験し、帰国して鬱になり、天上世界で神とマルクスを幻視して気力を戻し、革命防衛隊の追求をかわし、テヘランの大学で美術を学び、結婚し、離婚し、再び国外へ出るまでをオルリー空港のベンチで回想する。
原作者自身による映画化で、モノトーンを基調にしたグラフィカルな絵と、それを丹念に動かしたアニメーションは見ごたえがあり、抑圧や疎外感がたくみに表現されている。語り口がときおり平坦になるものの、作家性は明瞭であろう。ひとかどの作品である。物語の背景はそのままイランの現代史とオーバーラップしていくが、中身はあくまでもその時代を生きた十代の少女のモノローグであり、自分を包囲する現実に対して反発してみせはするが、反発の立ち位置がどうやらシャーの親戚筋で、あきらかに特権階級に属していて、ということになると、このモノローグもそういうつもりで受け止める必要がある。




Tetsuya Sato