2012年7月22日日曜日

メリダとおそろしの森

メリダとおそろしの森
Brave
2012年 アメリカ 100分
監督:マーク・アンドリュース、ブレンダ・チャップマン


王女メリダはどちらかと言えばお転婆な少女であったが、母親である王妃から王女としてのたしなみについてさまざまな指導を受けるようになり、そうしたことのいちいちをわずらわしく感じていて、そうしているうちにメリダの花婿を周辺の領主の息子から選ぶという話になり、メリダはこれに激しく反発するものの、なにしろしきたりであるということで状況は自動的に進行し、王子たちが弓比べで花婿としての資格を競うとメリダもまた弓を持ってその場に現われ、そもそも弓の技術には秀でていたので王子たちの的を残らず射とめ、そのようなメリダのせいで領主たちは面目を失い、もちろんメリダは母親から叱責され、城から抜け出したメリダは森で魔女と出会い、自分の運命を変えるためには母親を変える必要があると訴えて魔法のかかったタルトを手に入れ、城に戻ってそれを母親に食べさせると恐ろしいことに母親はクマに変わり、これはなんとかしなければ、ということでメリダはクマになった母親とともに城から逃れて森を訪れ、どうにか魔女の家を訪ねあてて母親をもとに戻すヒントを調べ、母親をもとに戻すためにはどうしても城に戻る必要があることがわかってクマになった母親とともに城に戻るが、メリダの父である王にとってクマは言わば宿敵であったため、クマになった母親は王に追われて森へ逃れ、母親をもとに戻す材料を手にしたメリダは馬にまたがって母親を追う。
開巻、メリダの赤いカーリーヘアが揺れ動く有様に目を奪われた。メリダの髪の描写、クマの毛皮の質感の描写は文句なしにすばらしい。
正攻法でまとめられたストーリーは直線的で、メリダの小さな弟たちの果敢ないたずらぶりがはさみ込まれるものの、伝統に縛られない自立した女性というわかりやすいメッセージをばらまきながら進んでいく。文体も直線的で、語り口に格別の個性は感じられない。ピクサーの、というよりは一時期のディズニーを思わせる仕上がりであり、そこはさすがにピクサーなので水準以上の作品にはなっているが、こちらがピクサーに求める水準には達していない。ハードルは上げないで、手元のところで手堅くまとめられているのである。
キャラクターの造形、背景描写、特に陰影の扱いに『ヒックとドラゴン』を意識しているような気配があったが、そうだとすれば、その結果はハードルを上げることにではなく、雑念に支配された小手先の処理につながっているような気もしないでもない。雑念があったとすれば、それは登場人物に与えるべきであった。どこか物足りない、というのが作品全体にかかわる印象である。 


Tetsuya Sato