2012年6月8日金曜日

ダム999

ダム999
Dam999
2011年 インド/アラブ首長国連邦/シンガポール 110分
監督:ソーハン・ロイ


アユールヴェーダの技を使ってなんでも直してなんでも予言する父シャンカランの息子ヴィナイは幼馴染のミーラに愛を抱いていたが、シャンカランの占いによればヴィナイとミーラの相性は最悪で、二人が一緒になれば必ず災厄が起こるということなので、その占いを信じたミーラはヴィナイを遠ざけ、ミーラの態度に怒ったヴィナイは故郷を離れて海員となって同郷のフレデリック・ブラウンが指揮するタンカーに乗り込むが、一型糖尿病の息子を救うために故郷を訪れて父とミーラと再会し、続いてフレデリック・ブラウンもまた故郷に戻るが、このフレデリック・ブラウンの父親というのはもともとそこの町の市長でダム建設の途中で不審な死をとげていて、父親の部下であったデュライがいまは市長となってフレデリック・ブラウンの姉を妻に迎えていて、ダムの建設を進めるかたわら、ダム建設反対派を平然と殺害しながら再選も狙い、反対派が次の市長にフレデリック・ブラウンを担ぎ出そうと試みるとフレデリック・ブラウンの家を訪れて選挙に出れば姉を殺すぞとはっきり脅し、一方ヴィナイはミーラを息子の母親にと望み、ミーラの心が揺れ動いていると、そこへヴィナイの妻でありレポーターをしているサンドラがダムの取材に現われて息子を抱き上げ、その様子を見たミーラの心は暗く沈み、ヴィナイは心を迷わせ、サンドラはヴィナイに関係の修復を求め、そこへフレデリック・ブラウンが姉の危機を知らせると、この機関士とレポーターは夜間にヴィナイの家に侵入してほとんど特殊部隊のような手際のよさでフレデリック・ブラウンの姉を救出し、それはそれとしてついに意を決したヴィナイがミーラを抱き寄せると運命が災厄を招きよせて空には暗雲が浮かんで雨を降らせ、やがて雨は大雨となり、植民地時代に作られたダムでは漏水が起こり、古いダムを囲む形で作れたダムでは危険を回避するために市長に放水の許可を求めるが、悪い市長はもちろん拒絶するのでダムの設計者が独自の判断で放水を決意して一度は危険が回避されるものの、そこへマグニチュード6.5の地震が襲いかかり、ダムは決壊してあふれた水が下流の町を押し流す。なにしろアユールヴェーダなので、運命を変えることはできないのである。
植民地時代のダムと新しいダムがどういう関係で、ダムと登場人物がどういう位置関係にあるのか、最後までよくわからない、というのは問題であろう。文体は不安定で話の立ち上がりにもたつきがあり、ダイアログは素人くさくて状況説明もあまり上手ではないが、とりあえず序盤の退屈さをどうにかしのぐとエキゾチックな背景に助けられていちおうは見られるようになる。監督のソーハン・ロイはもともと建築家でダムの設計などをしていたようで、そういう変わったキャリアからすればまとまっているほうだと言えなくもない(とはいえ、本当にそういう前歴ならダムの描写にもっとこだわってほしかったような気もするが、もしかしたらダムが嫌いだからそういう前歴を捨てたのか)。大量の死者が、という場面は処理をする過程まで盛り込んでかなりむごたらしい。ダム決壊シーンのCGはNHKスペシャルより少しましという感じで、画面の暗さでどうにか粗を隠している。踊りはない。






Tetsuya Sato