2012年5月24日木曜日

サンキュー・スモーキング

サンキュー・スモーキング
Thank You for Smoking
2006年 アメリカ 93分
監督・脚本:ジェイソン・ライトマン


タバコ研究アカデミーの広報部長で、つまりタバコ業界のロビイストであるニック・ネイラーはタバコを弁護するために飛び回り、多くのひとに嫌われ、憎まれていたが、息子から尊敬され、銃器業界のロビイスト、アルコール業界のロビイストといったよい友達にも恵まれている。ところがワシントンの新聞の女性記者がニック・ネイラーの秘密をすっぱ抜き、ネイラーはタバコ業界からも追われて窮地に立つが、息子に励まされて立ち直り、嫌われ者(タバコ会社や森林伐採業者、地雷製作者や子アザラシを殺している連中など)を守るために舌先三寸で戦うことで一念奮起し、反タバコキャンペーンの公聴会に乗り込んでいって禁煙派の上院議員と一戦を交える。
状況をことさらに戯画化するのではなく、大げさにするのでもなく、なんとなくそれらしくするだけでかなり滑稽に見えるという確信にしたがって進めたことで、たいそう冷笑的な内容に仕上がっている。結果として浮かび上がってくるのは誰もが自分のローンの支払いのために人間の尊厳の売り買いをやっているという構図であり、恐ろしいことにその先がない。アーロン・エッカートは前向きのキャラクターを演じて、この妙に有能なロビイストにリアリティを与えている。語り口のリズムはよく、視線の動きも切れがいい。これが監督一作目、ということだが、父親(アイヴァン・ライトマン)よりもセンスがだいぶいいような気がした。






Tetsuya Sato