2012年4月9日月曜日

JESUS 奇蹟の生涯

JESUS 奇蹟の生涯
Jesus
1999年 ドイツ/イタリア/アメリカ 111分 TV
監督:ロジャー・ヤング

第一次大戦とおぼしき戦場で騎兵がイエスの名を叫んで突撃し、負傷した歩兵がイエスの名を叫ぶ夢から覚めたイエスはヨゼフとともに大工仕事の出稼ぎに出ていたが、ユダヤの民はローマにかけられた重税に苦しみ、ローマ兵に守られた収税吏がイエスの家の戸を破ってヤギを連れ去り、事の次第をマリアから聞いたヨゼフはイエスを見てまだ予兆も現れないと嘆いてみせるが、そのヨゼフは間もなく倒れ、イエスは母に背中を押されてヨルダン川を訪れ、そこで洗礼者ヨハネから洗礼を受けると天から声がとどろいてイエスが神の子であることを認め、荒れ野に出たイエスをスーツを着た悪魔が誘惑し、荒れ野から戻ったイエスは腹を満たして二日のあいだ昏々と眠り、カナでおこなわれた結婚式では激しく踊って喉の渇きを訴えるが、母はワインがないことを伝えていまがそのときであるとイエスに告げ、そこでイエスは水をワインに変え、足萎えを直し、シモンの疑念を晴らすために網を魚でいっぱいにし、ローマ兵を攻撃するゼロテ党の一団と出会って暴力は何も解決しないと主張するが、ゼロテ党を率いるバラバは暴力が解決の手段であると主張して去り、エルサレムを訪れたイエスは神殿の物売りを駆逐し、その有様はピラトの宴会で余興として再演され、カエサルのものはカエサルに、という台詞を聞いて、いいこと言うじゃないか、とピラトが言い、一方、イエスは十二人の使徒を選び、ラザロを復活させてからロバにまたがってエルサレムに入城し、大祭司カヤパはイエスがエルサレムの情勢を悪化させているという政治的判断から逮捕を決意し、最後の晩餐がおこなわれ、イエスはゲッセマネの地で再び悪魔に誘惑され、悪魔は十字軍、魔女狩り、戦争などの未来を見せ、イエスの行為にいかなる意味もないと主張するが、イエスは罪の贖いを信じて悪魔を退け、逮捕されてピラトの前に送られ、ピラトはイエスを調べていかなる罪もないと判断を下してから鞭で打ち、バラバがイエスのかわりに釈放され、イエスは十字架にかけられ、イエスが絶命すると地震が起こってイエスの背後に見える水道が壊れ、イエスは三日後に復活して使徒たちの前に現れて福音を広めるように指示を与え、気楽な服装で現代世界に現れて子供たちに囲まれ、そこへなにやら気の抜けたフォークソングのような歌が流れる。
イエスの名においておこなわれた歴史的な悪の数々をイエスに見せたり、ユダやトマスのキャラクターに踏み込んでみたり、ピラトの脇にリウィウスとおぼしき人物を配置したり、と妙にひねったことをやっているが、当のイエスに関しては奇跡を連発して衆目を集めるという以上の描写がない。湖のほとりに立って石を投げて水切りをするイエスという光景も珍しいが、思いついたからやってみた、という以上のものではないだろう。不信心というわけではないものの、全体に敬虔さが欠けている。マリアが老いてなお美しいジャクリーン・ビセット、ヨゼフがアーミン・ミューラー・スタールという豪華版。しかもピラトはゲイリー・オールドマンだが、これは軽薄なだけで魅力がない。 




Tetsuya Sato