2012年4月29日日曜日

ラバー

ラバー
Rubber
2010年 フランス/アンゴラ 82分
監督:カンタン・デュピュー


双眼鏡を山ほども抱えたメガネの男が荒れ野に立っていると、そこへ一台の車が現われ、車のトランクから保安官が現われ、保安官はさまざまな映画を例にあげて人生は理由のないことの連続だと講釈を始め、この映画は理由のないことへのオマージュであると説明して去り、メガネの男が観客たちに双眼鏡を配ると観客たちは双眼鏡で荒れ野に目を凝らし、その荒れ野では一本の古タイヤが立ち上がってふらふらと進み、ペットボトルをつぶし、サソリをつぶし、なにやら念力のようなものを使って瓶を破壊し、人間の頭も粉砕し、女の子の車のあとを追ってモーテルに入るとエアロビ番組を鑑賞し、ハウスメーキングに現われたメイドの頭を粉砕し、捜査のために現われた保安官は観客たちはすでに毒殺されているのでここで起こっていることを現実と考える必要はないと部下に話し、ところが毒殺されずに残った観客が一人いるということで演技を続けることになり、台詞カードを読んでタイヤが犯人であると決め、数々の頭を粉砕したあと民家でテレビを鑑賞していたタイヤはショットガンで破壊され、それから三輪車の姿でよみがえる。
なにやらひねりのようなものは見えるものの、そもそも文体的な弱さを抱えている上に、映画のなかで進行中の映像と観客を直結したときにビハインドシーンを取り除いたことで、おそらく構造的な弱さを抱えている。画面と観客との関係はもっと複雑なはずだし、もっと冷笑的であっていい。孤独に殺人を繰り返す「タイヤ」はいちおうの他者性を帯びているが、見ていた限りでは思いつきの域を越えていない。



ラバー [DVD]
Tetsuya Sato