2012年4月4日水曜日

十戒

十戒
The Ten Commandments
1956年 アメリカ 220分
監督:セシル・B・デミル

イスラエルの民がエジプトで奴隷となって追い使われ、救い主の出現を待ち焦がれていたころ、エジプトの神官がエジプトに悪い星が落ちたことをファラオに告げ、これを聞いたファラオは生まれたばかりのヘブライ人の男子をことごとく殺すように命じるが、ヘブライ人の女ヨシャベルは自分の息子を救うためにかごに入れて川に流し、赤ん坊を入れたかごはファラオの妹ビシアのもとへ流れ、子を得られぬまま夫を失ったビシアは赤ん坊はモーゼと名づけてエジプト王家の一員として育て、成長したモーゼはエチオピアを征服し、ファラオの実子ラメシスと王位を争い、ファラオの心は傲慢なラメシスよりもモーゼに傾き、王女ネフレテリの心もまたモーゼに傾き、そのモーゼはヘブライ人が過酷に使役されているのを見て労働条件を改善し、その成果として都市の建設を成功させ、一方モーゼの成功が当然ながら面白くないラメシスは奴隷頭デイサンを使ってヘブライ人の救い主の所在を探り、やがてネフレテリの前にモーゼの出生の秘密が明らかにされ、ネフレテリの口から自分の出生の秘密を知ったモーゼは実の母の家を訪れると悩んだ末にみずから奴隷となってヘブライ人のあいだに入り、デイサンの口からモーゼの出生の秘密を知ったラメシスはモーゼを捕えてファラオの前に引き出し、モーゼはラメシスの手によってエジプトから追放されて砂漠をさまよい、ミディアン人に救われて羊飼いとなり、ミディアン人の族長の娘と結婚して子供をもうけ、羊を飼って暮らしているとそこへヨシュアが現われてエジプトに誘い、するとモーゼはシナイ山の山頂に光を見て山にのぼり、そこで神の姿を見て声を聞き、自らの使命を悟って山をおりたところで休憩が入り、エジプトを訪れたモーゼはラメシスの前に現れてイスラエルの民の解放を求め、ラメシスが断るとイスラエルの神はナイル川の水を血の色に変え、燃える雹を降らせ、それでもラメシスが言わばテロには屈しないという態度をつらぬくとイスラエルの神はエジプトの長子をことごとく殺し、根負けしたラメシスがイスラエルの民を解放するとイスラエルの民が無数に現われ、荷車を牽き、家畜を連れ、家財を担いでエジプトから逃れ、子を失ったネフレテリはラメシスにモーゼの血を求め、ネフレテリの嘲笑を浴びたラメシスは軍勢を率いてイスラエルの民を追い、イスラエルの民は紅海を背にして追いつめられるが、ここでモーゼが神に祈ると火の柱が現われてエジプトの軍勢を食い止め、さらに海が割れて道が現われ、イスラエルの民はこの道を通って対岸に渡り、イスラエルの民を追うエジプトの軍勢は口を閉ざした海に飲まれ、モーゼは律法を得るべくシナイ山にのぼり、イスラエルの民はモーゼの帰りを待つあいだに黄金の子牛を作って偶像をあがめるという大罪を犯し、そこへモーゼが十戒を手にして現われて十戒の刻まれた石版を子牛に投げつけ、すると地面が割れて罪人を飲み込み、それでも神の怒りはやまないのでイスラエルの民はそれから四十年のあいだ荒れ野をさまよい、そのあいだに不信心者は根絶やしにされる。 
若々しいモーゼがチャールトン・ヘストン、ラメシスがユル・ブリンナー。『出エジプト記』を材料に、特にモーゼの前半生にはかなり自由な解釈を加え、要所に特徴的なキャラクターを追加して通俗的で面白い映画に仕上げている。画面の作りは絵画的で、俳優が置かれた空間は古めかしいほどに演劇的で、ダイアログは製作当時としてもいささか時代がかっているものの、画面に焼き付けられた想像力は奔放さを感じさせる。 



Tetsuya Sato