2012年4月3日火曜日

十誡

十誡
The Ten Commandments
1923年 アメリカ 146分
監督:セシル・B・デミル

イスラエルの民がエジプトで追い使われてるので、イスラエルの神はモーゼをエジプトに送り、モーゼはファラオの前に立ってイスラエルの民を解放するように求めるが、ファラオがテロには屈しないという態度を示すので、イスラエルの神はエジプトの初子をことごとく殺し、ファラオの子も殺すので、テロに屈したファラオはイスラエルの民を解放し、イスラエルの民がモーゼに率いられてエジプトから逃げ出すと、エジプトの神々のふがいなさに怒ったファラオが軍勢を率いて追って現われ、するとイスラエルの民の前で紅海が割けて道が現われ、イスラエルの民はこの道を通って対岸に渡り、モーゼが律法を求めるためにシナイ山にのぼると、その留守のあいだに偶像を拝んで激しく堕落し、律法を得て戻ったモーゼは激しく怒って律法を刻んだ石版を砕く、という話を禁酒連盟のパレードの先頭に立っていそうな母親がすでに成人している二人の息子に読み聞かせると、息子のうちの一方ダン・マクタヴィッシュは十戒をせせら笑い、安息日に恋人と踊り、それを母がとがめると自分はリッチでパワフルになると宣言して家を飛び出し、それから数年後には全米でも有数の建築業者に成り上がり、不正行為の数々によって富を築き、教会の建築を受注すると信心深くて十戒を守るまじめな大工である兄ジョン・マクタヴィッシュに監督を依頼する一方、部下にはコンクリートのセメント含有率を極限まで減らすように指示を出し、妻のある身でありながら婚姻の秘跡を踏みにじって中仏混血の女サリー・ラングと関係を持ち、一方、完成間近の教会に立って弟の不正に気づいたジョン・マクタヴィッシュが弟に工事の中止を求めていると、そのあいだにその教会には兄弟の母親が入り込み、そこへ手抜き工事で作られた教会の壁が崩れ落ち、下敷きとなった母親は自分の信仰が愛よりも畏れに傾いていたことをダン・マクタヴィッシュに告げて死に、ダン・マクタヴィッシュは母の死を見て激しく悔やむが、手抜き工事を嗅ぎつけた暴露専門雑誌に恐喝され、すべてを失うことを恐れて金を払う決意をすると、その金を工面するためにサリー・ラングの家を訪れ、サリー・ラングに贈った真珠の首飾りを奪い取るが、そこでサリー・ラングは自分がモロカイ島のハンセン氏病患者隔離施設からの脱走者であると告白し、自分もすでに感染していることを知ったダン・マクタヴィッシュはサリー・ラングを撃ち殺して家に戻り、母の肖像画の前で再び激しく悔やんでから妻に事情を説明し、そこへ警察がダン・マクタヴィッシュを殺人容疑で捕えるために現れるので、ダン・マクタヴィッシュは警察の手から逃れてモーターボートを荒れ狂う海に出し、一方、ダン・マクタヴィッシュの妻メアリーは自分もまたハンセン氏病に感染していると信じて雨の中に飛び出すとジョン・マクタヴィッシュの家を訪れ、信心深いジョン・マクタヴィッシュの口から聖書の言葉を聞いて平安を得る。
第一部が古代編、第二部が現代編という構成で、古代編に登場するモーゼがいささか貫録を欠いていて、どうにも手品師めいて見えるところが難点だが、巨大なセットと膨大な数のエキストラを動員している。技術的な問題からか、紅海が割けるところは溶けたゼラチンそのまんま、という感じであろうか。『出エジプト記』をそのままなぞっただけの古代編に比べると、現代編のほうは恋あり、野望あり、裏切りあり、殺人あり、逃亡あり、とそれなりにドラマチックな内容で、そこへ何を考えたのか、唐突にハンセン氏病がからむあたりが無理矢理な感じではあるものの、話の面白さでいちおう見せる。とはいえ、ダン・マクタヴィッシュがなにかしらのオブセッションのとりことなって十戒を上から順に破っていく、というような単細胞な作りのほうがもっと面白かったかもしれない。


Tetsuya Sato