2012年3月19日月曜日

暴走機関車

暴走機関車(1985)
Runaway Train
監督:アンドレイ・コンチャロフスキー


アラスカ、ストーンヘヴン重警備刑務所の囚人マニーは脱走したことで三年にわたって懲罰房に送られていたが、司法がこの処分を不当と判断したことで刑務所の所長ランケンは本意に反してマニーを解放するが、懲罰房から放たれたマニーはすぐさま脱獄を考え、マニーを英雄としてあがめる若い囚人バックの助けを得て刑務所から逃れ、バックとともに零下30度の雪原を越えて列車の操車場にたどり着くとそこで直観にしたがって四重連の機関車の最後尾に乗り込み、すると先頭の機関車では機関士が心臓発作を起こして列車から落ち、列車は様子のわからない脱獄囚二人を乗せて暴走を始め、鉄道の指令所では列車が無人であると考えて脱線の決定を下し、まさしく脱線しようという寸前で列車が汽笛を鳴らすので、無人であるはずの列車が実は無人でないことがわかり、指令所は脱線の指示を翻してポイントを戻し、汽笛を鳴らした機関助手は脱線を予期して四重連の最後尾に現われ、機関助手の話から事情を知った囚人二人は列車から飛び降りて逃れようとするが、すでに速度は120キロを超え、機関助手の助言にしたがって連結器の隣のケーブルを切り離すことで速度を落とすことに成功はするが、四重連の三両目は車体が流線型で先頭車両に達する手段はなく、そうして往生しているところへランケン所長を乗せたヘリコプターが現われて所長が部下を降下させるが、部下は機関車の窓ガラスに叩きつけられてどこかへ消え、マニーは割れた窓から身を乗り出して所長をののしり、所長に挑戦し、割れた窓から外へ出て先頭機関車に飛び移ると所長もまたヘリコプターから単身で降下して機関車に移り、マニーは運転室で待ち伏せて所長と対決する。人生を見失ったマニーは復讐欲と自己憐憫のあいだを暴力的に揺れ動き、そのマニーを単なる復讐欲のかたまりへと追いつめる所長はもう何がなんだかよくわからない。ジョン・ヴォイトが目を見開き、歯を食いしばってマニーを熱演し、ジョン・P・ライアンがランケン所長を怪演している。マニーの相棒バックがエリック・ロバーツ、機関助手サラがレベッカ・デモーネイ。序盤、刑務所内のボクシングのシーンでエリック・ロバーツと対戦するボクサーの役でダニー・トレホが登場する。ダニー・トレホはこれが映画初出演。衝突によって異形の怪物と化した機関車が重低音をとどろかせながら雪原を疾走する様子には異様な迫力があり、氷雪をまとう機関車の車体は見る者の心を凍てつかせ、氷結した鋼鉄と血をほとばしらせる肉体の対比が痛々しい。運命を乗せたまま霧氷のかなたへと走り去る機関車の姿はどこまでも重たくてむなしくて、さすがにコンチャロフスキーであるなあと感心する。 






Tetsuya Sato