2012年3月12日月曜日

シャーロック・ホームズ

シャーロック・ホームズ
Sherlock Holmes
2009年 アメリカ/ドイツ 129分
監督:ガイ・リッチー


シャーロック・ホームズとワトソンは邪教の儀式に踏み込んでブラックウッド卿を捕え、さらわれた女性を救い出すが、処刑されたはずのブラックウッド卿は間もなく墓場からよみがえり、第四テンプル修道会をしたがえると世界征服をたくらむので、シャーロック・ホームズとワトソンが戦う。
まずきわめて印象的だったのが19世紀末のロンドンで、街頭の雑踏、曇天の下に連なる建物、建設中のタワーブリッジ、テムズ川から見た遠景などが古色を帯びて実に美しく立ち現われ、波間に沈む鋼鉄船の舳先までがじっとりと同じ色どりを帯びて好ましい。これはやはりロンドン子であるガイ・リッチーならではのものであろう。そのガイ・リッチーの独特なクロスカッティングの手法はおもにホームズの推理の説明に使われて効果を上げており、一方いつものガイ・リッチーの映画に比べるとガイ・リッチー的な文体が後退しているようにも感じられるが、仮にそれがあるとしても映画としての面白さは破格であり、とにかくやるべきことはひととおりやり、最後にはタワーブリッジでチャンバラまでやってくれるので、見ているうちにいくらか多幸症的な気分になってくる。
非常にモダンな風貌の、つまり英国紳士階級には決して見えないロバート・ダウニーJr.がはたしてホームズに見えたのか、という点については疑問が残るが、ロバート・ダウニーJr.は役どころを真摯に演じているし、ホームズという人物の奇人ぶりはロバート・ダウニーJr.というキャラクターを通じてうまく表現されている。ワトソンのジュード・ロウも文句のない出来栄えであり、両者の関係をバディムービーの定型で処理したことで掛け合いが楽しくなっているし、ワトソンとメアリーの結婚を阻もうとするホームズの悪辣さは『フロント・ページ』のウォルター・マッソーにも匹敵する。マーク・ストロングの悪役ぶりもなかなかのもので、登場場面は決して多くはないものの、現われると場をさらう。






Tetsuya Sato