2012年3月1日木曜日

ラビナス

ラビナス(1999)
Ravenous
監督:アントニア・バード


19世紀半ばのシエラネバダ山中、この世の果てのような場所に置かれたスペンサー砦にある晩のこと、怪しい風体の人物がたどり着き、戸口の前でばったりと倒れる。助けて暖めて話を聞くと、山中にあるとある洞窟で遭難者の一行が食料に困って人肉食に走っているという。そこで救援に出発すると、という話なのだが、ばったりと倒れているのがロバート・カーライルなので、なんか怪しいのである。以降の展開も妙なことになっていくのだが、正体を言えば女の監督が男を玩具にするために作ったような映画で、なにかというと男が血まみれになるし、汚れるし、ゲロまで吐く。いや、そもそも冒頭のアメリカ・メキシコ戦争の場面で主役のガイ・ピアースがぼろぼろになって呆然としているあたりから、すでに怪しかったと言えば怪しかった。で、早速この映画の「食人」というモチーフを「吸血鬼」に置き換えてみると、実はこれががアン・ライスばりのやおい話であるということが判明する。しかも食人者=吸血鬼という図式は徹底していて、劇中の台詞によれば食人というのはたいそう健康によろしいことになっていて、結核は直るわ、頭痛は直るわ、鬱病も直るわ、視力も回復するわ、怪我は翌日には直ってるわで、引き続き食べたくなることを除けば悪いことはなにもないようなのである。



Tetsuya Sato