2012年2月26日日曜日

スターレック

スターレック 皇帝の侵略(2005)
Star Wreck: In the Pirkinning
監督:ティモ・ヴォレンソラ


フィンランド製のビデオオリジナル作品で、ほぼ全編『スタートレック』(どちらか言うと『ネクスト・ジェネレーション』)のパロディになっている。で、ピッカード、というよりは「カーク艦長」みたいなやつと「クリンゴン」みたいなやつと「データ」みたいなやつが、どうやら「ボーグ」みたいなものとの戦っているうちに現代の地球へ現われ、場末でうらぶれた生活をしながら自分たちの世界へ帰ろうとしている。予定どおりならば、とがった耳をした「バルカン人」みたいなやつが人類とコンタクトして地球に繁栄をもたらしているはずが、その「バルカン人」みたいなやつは飲兵衛な上にどこかのロック歌手と意気投合して自分の仕事を投げ出したため、帰還の計画も思うようには進まない。三人組は「バルカン人」みたいなやつが自分の宇宙船をロシア人に売り飛ばしたことを知るとロシアを訪れ、まず宇宙船を確保すると大統領と契約を交わしてロシア人を訓練し、未来のテクノロジーを利用してまるっきり『スタートレック』なロシア製宇宙艦隊を作り上げ、その戦闘能力を悪用して地球を征服、「カーク艦長」みたいなやつは皇帝を名乗ってロシアの大統領を始末すると全地球の支配者になるが、人望がまったく得られないので飢えた人民の反乱にあい、地球を嫌うと艦隊を率いて宇宙へ飛び出す。そして宇宙で見つけた得体の知れない穴をくぐって反対側へ到着すると、そこが実は並行世界で、いきなり現われたこの侵略者に対し、地球の艦隊が反撃してくる。大戦闘の末に皇帝の艦隊が勝利を収め、敵の巨大な宇宙ステーション(格納庫の壁にはマクドナルドの看板の隣にちゃんとノキアの看板が)に乗り込んでいって、みんなで呑めや歌えの大騒ぎをはじめ、酔いつぶれたり、トイレでげろを吐いたりしていると、そこへ地球艦隊の援軍がやってくるので、また大戦闘になり、ドジを踏んだり、ごちゃごちゃと策を弄したりしているうちにどうにか勝利するものの、皇帝の艦隊も事実上、全滅、船は墜落し、気がついてみると、また最初の三人だけになって、氷原でわびしく焚き火にあたっている。
登場人物のほとんどがだらしのないのんだくれで、いちおう主人公の「カーク艦長」みたいなやつは虚勢を張ることとずるをすること、あと下半身の欲望をどうにかすることしか考えていない。思いつきはまったく悪くないものの、演出も出演者の演技も素人の域を出ておらず、そこへフィンランド的な、と言うべきなのか、そう言ったら失礼、と考えるべきなのか、重苦しい野暮ったさが追い討ちをかけるので、つまり、とても素人臭くてとても野暮ったい代物になっている。そうした素人臭さや野暮ったさにつきあうのは少々つらいものの、宇宙空間の戦闘場面など、特殊効果は意外なほどの仕上がりで、敵味方双方数十隻が入り乱れて戦い、光子魚雷を乱射し、派手に爆発する。下手は下手だが、とにかくやる気は立派なものだと思うのである。 




で、この映画の監督ティモ・ヴォレンソラの新作が『Iron Sky』。現時点では日本公開は不明。






Tetsuya Sato