2012年2月18日土曜日

尻怪獣アスラ

尻怪獣アスラ(2004)
Rectuma
製作・監督・脚本:マーク・ピロ


ロサンゼルスの郵便局で働いているウォルドー・ウィリアムズは妻ヴァルヴィータとともに休暇でメキシコへ出かけ、海岸で甲羅干しをしているあいだにカエルによってレイプされる。臀部に激しい痛みを感じたウォルドー・ウィリアムズは帰国後に肛門科の医者を訪ね、死期が近いと宣告されて、謎の日本人医師ワンサムサキの治療を受けることになるが、肛門に核収縮棒を挿入された結果、臀部が緑色の光を放ち、しかも治療後に浣腸を怠った結果、ウォルドー・ウィリアムズの尻は凶暴化してウォルドー・ウィリアムズのからだを離れ、夜ごとに殺人を繰り返す。そしてついに巨大化して暴れだすので、日本から口パクのあわない怪獣退治の専門家が呼び寄せられ、なんだか恥ずかしい作戦が実行に移される。
アホウである。製作会社名"Pirromount Pictures"がすでにアホウである。続いて"A Mark Pirro Film"と表示されるべきところが"A Mark Pirro Pizza"となっている。低予算である。出演者は総勢二十人くらい、特撮はちゃちで、凶暴化した「尻」のメカニカルなどは半日で作ったような代物だし、パニックシーンなどはどこかのニュースフィルムの使い回し、出てくる尻(本物のほう)は不快なだけ、予想できることだがネタは基本的にお下劣である。ただ、それなりに頭を使って作ったような痕跡があり、そのせいでかなり救われている。登場人物の大半はどうやら異常を抱えているし、あきらかに『モスラ』のパロディーとおぼしき日系女性の二人組がしつこくしつこく狂言回しに登場して歌を歌うし、あくまでもしつこく歌う、朝までだって歌えると観客に向かって挑戦する。どうせ数人で自分の家の近所で撮ったのに違いないのに、エンディング・クレジットではロサンゼルス・クルーのほかにニューヨーク・クルー、サンフランシスコ・クルーまでいたとうそぶいている。殺人事件の捜査に乗り出してくる女性刑事はレクター博士みたいな凶悪犯に目の前でハムスターの踊り食いをされたせいでPTSDに陥っていて、その以来なぜか自分をジョディー・フォスターまたはクラリス・M・スターリングであると思い込んでいて、これがまた姿からしぐさまで、 『羊たちの沈黙』のジョディー・フォスターに微妙に似ていたりする。最後になって特攻隊員がどうしても必要になると、どこかのテロリスト・キャンプに出かけていって、アメリカに入国できないと悩んでいるイスラム系自爆テロリスト(あきらかにビンラディン)をスカウトしてくるし、それ以降の描写はたぶんに宗教的な問題をはらんでくるので気の小さいわたしにはとてもではないが正視できない(しかも、その前にはカトリックにも泥をかけているし)。


Tetsuya Sato