2012年2月13日月曜日

ピッチ・ブラック

ピッチ・ブラック(2000)
Pitch Black
監督:デヴィッド・トゥーヒー


旅客を乗せた辺境航路の宇宙船が遭難し、とある惑星に不時着する。この星には太陽が三つあって夜がなく、しかも土星のような輪を二重に備えた巨大な惑星との連星になっている。生き残ったのは「女性パイロット」「脱獄囚護送中の警官」「暗闇でも目が見える脱獄囚」「タフそうな女性」「不良っぽい少年」「古物商」「巡礼中の4人のイスラム教徒」という組み合わせで、助かったことを喜んだイスラム教徒は早速お祈りをするし、古物商は宇宙船の残骸の屋根にパラソルを立ててワインを抜き、葉巻に火をつけて「人間には贅沢が必要だ」と宣言する。なんだこれは、と思って見ているとこの寄せ集め集団が生存と脱出のための行動をてきぱきと開始し、そこへ地下に潜んでいた獰猛な生物が襲い掛かるのである。怪物は光を嫌うが、この夜のない惑星には22年に一度日食が訪れる。そしてまさにその瞬間が近づいていた。というわけで、荒涼としたクイーンズランドのロケ効果に加えて日食の(今時ないような)天体描写がすばらしく、それを背にして雲霞のように襲来する飛行生物とくるのでイメージの点ではほとんど文句のつけようがない。日食がやってくると題名どおりの「まっくらけ」になり、ただ脱獄囚の目だけに闇の中にひそむ怪物どもの姿が見えるという仕掛けが発動する。惜しむらくは人物描写と展開に少々もたつきのあるところで、これで15分短かったら傑作になっていたかもしれない。


Tetsuya Sato