2012年1月3日火曜日

D.W.グリフィス『イントレランス』(1916)

イントレランス(1916)
Intolerance: Love's Struggle Throughout the Ages
監督・脚本:D.W.グリフィス


(現代編)改革主義者の婦人たちが資本家の姉に資金を求めると、姉は資本家に資金を求め、資本家は資金を充当するために工場労働者の給与を切り下げるので、ストライキが起こり、鎮圧のために軍隊が派遣され、工場の警備員も発砲する。すると工場で働く青年の父が死に、可愛い娘の父は職を失い、青年は悪の道に染まるものの可愛い娘の愛の力で立ち直り、二人は結婚するものの、青年は無実の罪で刑務所へ送られ、可愛い娘の息子は改革主義者たちに取り上げられ、そこへ町のボスが現われて息子を取り戻すための手伝いをしようと申し出るが、ボスは嫉妬を抱いて情婦に殺され、出所してきた青年は無実の罪で刑務所へ送られ、そこで死刑を待っていると、やがて真犯人の存在が明らかになり、死刑執行停止のために可愛い娘が飛び出していく。最後のこの追っかけがものすごい。
(近世フランス編)茶色い眼をした可愛い娘は青年と婚約を交わしていたが、二人はどちらもユグノーで、ユグノーに敵意を抱くカトリーヌ・ド・メディチはシャルル九世をそそのかして聖バルテルミーの虐殺を引き起こし、茶色い眼をした可愛い娘の家は傭兵どもの襲撃にあい、通行証を手にした青年は娘を助けるために飛び出していく。
(古代エルサレム編)パリサイ人が偽善者ぶりを発揮していると、そこへイエスが現われて奇跡を起こたりマグダラのマリアを救ったりするので処刑される。
(古代バビロン編)バビロンにやって来た山の娘がベルシャザールに一目ぼれするが、山の娘にはベル神を崇拝する青年が一目ぼれする。その頃、キュロスがペルシアの軍勢を率いてバビロンに迫り、バビロンは難攻不落ぶりを発揮してペルシア勢を退け、バビロンの民は勝利を祝って宴会を始め、バビロンのイシュタル信仰に異を唱えるベル神の神官はキュロスに意を通じてバビロン陥落を画策し、その事実を青年から聞かされた山の娘は事実を確認した上でベルシャザールに報告するが、そのときにはすでにペルシア勢が門からなだれ込んでいる。
超大作である。とりわけバビロン編では本物のバビロンにもなかったのではないかと思えるような巨大建造物が林立し、膨大な数のエキストラが登場する。迫るキュロス王の軍勢も半端ではないし、攻城戦になると当然のように攻城塔が登場するし、投石器や石弓も登場するし、なんだかよくわからない火炎放射器も登場する。そのバビロン編のどこか不寛容だったのか、これもいまひとつよくわからないし、そもそも『国民の創生』のような不寛容きわまりない映画を作った人物に他人の不寛容を云々する資格があるのかどうかも怪しいが、四つの異なるエピソードが同時進行する形で混在し、四つのクライマックスが同時に突っ走る緊張感は相当なもので、グリフィスの才能はまったく非凡なものであると感心させられる。とにかく、出てくる絵が圧倒的である。 
イントレランス クリティカル・エディション [DVD]

Tetsuya Sato