2012年1月2日月曜日

D.W.グリフィス『國民の創生』(1915)

國民の創生(1915)
The Birth of a Nation
監督:D.W.グリフィス


北部の急進的な政治家の息子フィル・ストーンマンは弟とともにサウスカロライナに住む親友ベン・キャメロンを訪ね、その妹フローラと恋に落ちる。そしてベン・キャメロンはフィル・ストーンマンの妹エルシーの写真を見て会いもしないうちから恋に落ちる。しかし間もなく南北戦争が勃発、両家の兄弟はそれぞれ北軍と南軍に志願し、それから二年半、ストーンマン家の次男はキャメロン家の三男と同じ戦場で戦死し、キャメロン家の次男がさらに戦死し、ベン・キャメロンは北軍の捕虜となる。戦闘で重傷を負ったベン・キャメロンは勤務する北軍の野戦病院に送られ、ここで看護婦として勤務するエルシー・ストーンマンと初めて出会う。ベン・キャメロンの母親が苦労して面会に訪れるが、いまだ病床にあるベン・キャメロンにはすでに死刑の宣告が下され、嘆く母親にエルシー・ストーンマンが手を差し伸べ、ふたりの女はリンカーン大統領に直訴して恩赦を勝ち取る。南北戦争の終結後、ベン・キャメロンは荒廃した自宅へ戻って家族と再会し、一方、急進的な政治家ストーンマンは南部の白人への弾圧をリンカーンに訴えるが、リンカーンは宥和政策を唱えて退ける。しかし1865年4月14日、世に言うところの運命の日にリンカーンは(精密に再現された)フォード劇場のボックス席でジョン・ウィルクス・ブースに暗殺され、そのあと、おそらくはなにかの手違いによって、政府の舵取りは急進的なストーンマンに任される。そのストーンマンの前には堕落した白人によって扇動され、浮かれて慣れない権力を手にした黒人サイラス・リンチが現われ、ストーンマンは南部における集票活動をこのサイラス・リンチに一任、自らもまた家族とともにサウスカロライナを訪れる。ベン・キャメロンはエルシー・キャメロンと再開し、二人の仲は発展するが、二人の逢引の光景を木陰から盗み見るのは邪悪な恋心を抱いた黒人サイラス・リンチなのであった。そのサイラス・リンチは黒人を政治勢力として結集し、民兵組織を使って白人の投票をさまたげ、自らはサウスカロライナの副知事となり、また同一党派の黒人多数を州議会に送り込むが、事態を看過し得ないとする南部の白人はついにクー・クラックス・クランを結成して黒人勢力に挑戦する。サイラス・リンチはスパイを放ってKKKの関係者を探し、キャメロン家の温厚な主人キャメロン博士が誤りによって逮捕されると、キャメロン一家は黒人従僕、黒人家政婦の協力を得て父親を奪還、北軍退役軍人の一家が暮らす大草原の小さな家に難を逃れるものの黒人民兵隊によって包囲される。エルシー・ストーンマンはサイラス・リンチに直訴して問題の解決を試みるが、サイラス・リンチはエルシー・ストーンマンに求婚し、激しい身振りをともなう激しい拒絶に出会って逆上、結婚を強行するためにエルシー・ストーンマンを監禁する。しかしエルシー・ストーンマンは窓ガラスを破って助けを求め、助けを求める声を聞いたクー・クラックス・クランの面々は白い衣に身を包み、馬を駆って町を襲撃、黒人民兵隊と戦闘になる。戦いはクー・クラックス・クランの勝利に終わり、エルシー・ストーンマンは救出され、邪悪な恋心を抱いた黒人サイラス・リンチは分相応の最期を遂げ、草原の小さな家で包囲を受けていたキャメロン一家もまたクー・クラックス・クランの活躍で救い出される。黒人は武装解除され、次の選挙では選挙権を事実上剥奪され、アーリア系は対立を忘れて再び手を取り合い、世界には平和が戻り、恋人たちは水平線にエルサレムを幻視する。
南北戦争のせいで苦労させられた南部人D・W・グリフィスによるサイレントの大作。映像はダイナミズムがあり、構図には工夫があり、いま見てもまったく古びていない。とはいえ、かなり政治的な問題(戦えクー・クラックス・クラン、強いぞクー・クラックス・クラン)を積極的に抱え込んだ結果、成功した『コルベルク』(1945年製作のドイツの戦意高揚映画)のようにしか見えない、という難点がある。
國民の創生 [DVD]

Tetsuya Sato