2012年2月10日金曜日

海底軍艦

海底軍艦(東宝 1963,94分)
監督:本多猪四郎

12000年前に太平洋に消えた謎のムー帝国は超科学を利用して再び地球の支配者に返り咲こうとたくらんでいたが、海底帝国という立地が災いしたのか、頻発する落盤事故はいかんともしがたく、そこで地上に工作員を送り込んで落盤対策の専門家などをさらっていたが、それはそれとしても座視できないのは神宮寺大佐の海底軍艦『轟天号』であり、その秘密を探るために神宮寺大佐のかつての上司、楠見元海軍少将などを誘拐しようともたくらむものの、これはこれで邪魔にあって失敗に終わる。だがそれはそれとして地上の覇権を確保するためには全世界を脅迫する必要があり、そこで各国に脅迫フィルムなどを送り届けてムー帝国の存在を知らしめ、恫喝しようとたくらむが、フィルムの内容があまりにも荒唐無稽であったためか、国連でも相手にしてもらえない。業を煮やしたムー帝国はついに実力行使に打って出て、ヴェネチアを沈めたり、香港を沈めたりということをするが、それはそれとして気がかりなのはやはり神宮寺大佐の海底軍艦『轟天号』なのであって、その神宮寺大佐の秘密基地にはかつての上司、楠見元海軍少将とその一行が訪れ、世界のためにムー帝国と戦ってもらいたいと神宮寺大佐に求めると、こちらはこちらで一種の狂信者なので、神宮寺大佐は要請を拒絶し、そもそも『轟天号』は日本再興のために建造したものであり、それ以外の目的には使用できないと主張する。すると一行に加わっていた神宮寺大佐の娘は父親を拒絶し、一行に加わっていたムー帝国の工作員は神宮寺大佐の娘をさらい、『轟天号』のドックを破壊する。そこで大佐も遂に腰を上げ、ムー帝国と戦うのである。
世にもいかがわしい海底帝国、原潜『レッドサターン』号の沈没、陥没する丸ノ内、突進する『轟天号』、などとそれなりに見せ場は用意されているが、ムー帝国があの超科学にこの風俗、というのが言わば一種の決まりごとであるとしても個人的にはやや受け入れにくい。光線兵器を操る連中が接近戦では槍しかない、というのはやはり信じられないのである。それともあれはみな儀仗兵だったのか。もう一つ、わたしの場合の難点をあげると、それは主役メカの『轟天号』で、つまりわたしはドリル兵器のたぐいに格別の執着をもっていないのである(白状すると嫌いである)。だから先端にドリルがついていても格別感心はしないし、それ以外の兵器が冷凍光線砲だけ、という単調さは問題のように思えてならない。どちらかと言うと現用兵器のほうに関心が寄っているので、『レッドサターン』号が水圧で押し潰されて沈んでしまう、という場面のほうが印象に残るのであろう(こどもの頃、この場面を見てすごいと思った)。ムー帝国も威張っていた割りにはたあいないが、天本英世の神官だか長老だかは、なんだかよい味を出していたような気がする。



Tetsuya Sato