2012年1月14日土曜日

恐怖の雪男

恐怖の雪男(1957)
The Abominable Snowman
監督:ヴァル・ゲスト


謎の生物イェティを求めて、登山隊がヒマラヤに登る。だが、これは学術調査隊ではなく大衆の好奇心を満たして意識革命を起こそうと企む邪悪な登山隊であったので、どうにかイェティとの遭遇を果たすものの、自らの思惑に滅ぼされて次々と命を落としていく。ただ一人生き延びて悲劇を伝えるのは、登山に先立ってラマ僧から謙虚であれと教えられていた善良な学者一人なのであった。どうせ低予算映画と思って舐めて見始めたら、ちゃんとアルプスかどこかでロケをしているし、安易に発砲すれば雪崩れが起こるし、イェティが出てくれば出てきたで相当に怖い。しかもこのイェティ、最後になるまで右手しか登場しないのである。登場人物がその全身を見ていても、画面に映るのは右手だけ。で、それがテントの隙間から這い込んでくるというような場面が意外なほど怖い。なんだか「ガラスの仮面」の月影千草かという感じだが、背中をどつくようなストレートな描写に慣れていると、このような控え目な描写が実に新鮮なのである。フレーミングとダイアログで見事に場面を作り上げる筆力に感心した。 
恐怖の雪男 [DVD]

Tetsuya Sato