2012年1月9日月曜日

アフリカの女王

アフリカの女王(1951)
The African Queen
監督:ジョン・ヒューストン

イギリス人の兄妹が中央アフリカでメソジスト派の布教活動にいそしんでいる。兄は司祭の試験に失敗していて、妹は不器量で嫁のもらい手がなかったらしい。周りにいるのはアフリカの"土人"ばかりで、たまにやってくるイギリス人は近くの鉱山でベルギー人のために働いている薄汚い"職人"のみである。第一次大戦勃発とともに兄妹の村にはドイツ軍が進攻し、家々に火をかけて村人を兵士として徴発する。そのショックのあまり兄は病死し、残された妹は職人の船で村を後にする。
職人がハンフリー・ボガートで、行かず後家の妹がキャサリン・ヘップバーン、船の名前が「アフリカの女王」である。果敢な性格の妹は湖を占拠している敵の砲艦を爆破しようと決意して、不可能な川下りを提案する。で、二人はちっちゃな蒸気エンジンを搭載した「アフリカの女王」で中央アフリカの川を下り、湖で砲艦爆破の準備にかかるのである。もちろんそこへ至るまでには激流があり、ドイツ軍の要塞があり、二人は恋に落ちたり泥だらけになったり船を修理したりする。いろいろと起こるわけだけど、何がいいのかと言うと無駄がない。構成要素のことごとくがドラマツルギーに奉仕していて、無用のリアリティや情緒を排除しているのである。ドイツ軍が来るぞという話をしていると、次の場面ではちゃんとドイツ軍がやってくるし、恋に落ちて関係が前進しても、行為には必要最小限の説明しか与えない。時代による表現の制約があるにしても、それで十分だろうということである。昨今のような余計な説明は映画を30分から1時間も長くして、しばしば観客を退屈させることになる。時間の無駄づかいはしないことだ。とにかく見ていて心地よかった。 
アフリカの女王 [DVD]

Tetsuya Sato