2011年12月14日水曜日

ジョン・フォード『リバティ・バランスを射った男』(1962)

リバティ・バランスを射った男(1962)
The Man Who Shot Liberty Valance
監督:ジョン・フォード

ランス・ストッダード(ジェイムズ・スチュアート)は東部で教育を終えて弁護士となり、野心に燃えて西部を目指す。ところが乗り込んだ駅馬車がリバティ・バランス(リー・マーヴィン)とその一味に襲撃されるので、ランス・ストッダードはリバティ・バランスに対して法の裁きを約束する。もちろんリバティ・バランスは無法者であったので法律家ランス・ソトッダードを鞭で何度も打擲し、さらに法律書を破り捨ててその場から去る。負傷したランス・ストッダードはシンボーンの町で牧場を営むトム・ドニファン(ジョン・ウェイン)に救われ、シンボーンの町に運ばれてトム・ドニファンの恋人ハリー(ヴェラ・マイルズ)の介抱を受ける。回復したランス・ストッダードは町の新聞社の一角を借り受けて法律事務所を開業し、さらに教育を受けていない人々を集めて読み書きを教え、さらに政治教育をほどこしていく。この頃、西部の準州に属するシンボーンの町では州昇格のための代議員選出の動きがあり、同じ準州でも大牧場主たちはこの動きを快く思っていない。実はリバティ・バランスこそが大牧場主たちによって派遣された民主運動圧迫の道具であった。町で代議員選挙が始まるとリバティ・バランスとその一味が現われて妨害を加え、リバティ・バランスは代議員に選出されたランス・ストッダードに決闘を申し込む。まともに銃を扱えないランス・ストッダードにトム・ドニファンは逃亡を勧めるが、なりゆきからランス・ストッダードは銃を握り、リバティ・バランスの前に進んでいく。
幸福な物語ではない。トム・ドニファンは町に出現した新たな状況を前に自分を犠牲にして結局人生を投げ出してしまうし、ランス・ストッダードは理想に向かって突き進むが、後ろめたさを抱えている。そして結婚は必ずしも祝福されていない。おまけに悪役リバティ・バランスですらが、大牧場主の雇われ者であり、自由な無法者ではないのである。ジョン・フォードの演出はテンポが速く、冗舌を排し、ほどよくユーモラスで、見ていて実に心地よい。脚本は法の正義と西部の法を小気味よく対決させ、政治力学とジャーナリズムを味付けにして手際がよく、一言で言い表される「西部」の世界の弱者、移民集団の多面性を巧みに描き出している。 
リバティ・バランスを射った男 [DVD]