2011年12月27日火曜日

エドワード・ドミトリク『ケイン号の叛乱』(1954)

ケイン号の叛乱(1954)
The Caine Mutiny
監督:エドワード・ドミトリク


第二次大戦末期、プリンストン出の青年ウィリス・キースは海軍に志願して三か月の士官養成コースを受講したあと少尉となって老朽の掃海艦ケイン号に配属となるが、艦長のゆるやかな規律の下で比較的ゆるやかに勤務する乗員の様子を目にして反発し、そこへ新たな艦長フィリップ・クィーグが着任して規律の強化を主張すると、これこそが海軍であると好感を抱く。ところが間もなくクィーグ艦長はつまらない小言に夢中になって操艦を誤り、そのせいで装備を失うと虚偽の報告をし、上陸作戦に投入されるとあきらかに憶病なふるまいをし、冷蔵庫にあったはずのイチゴがなくなっていることに気がつくと全艦を叩き起して捜索にかかり、何かがおかしいと考えた副長以下士官たちはクィーグ艦長の排除を画策するが、そうしているあいだにケイン号は台風の真ん中に突っ込んで激しくもみしだかれ、転覆を恐れた副長は進路変更を認めないクィーグ艦長を指揮能力喪失者とみなし、事実上の反乱を起こす。構図としては長年にわたる戦争のせいで神経症をわずらう艦長と状況に不慣れな予備役士官や粗製乱造された若い士官が互いに接点を見つけられないまま関係を破綻させるという形で、艦長がハンフリー・ボガート、やや愚直な副長がヴァン・ジョンソン、艦長の異常を言い立てる作家志望の通信長がフレッド・マクマレイ、軍法会議の検察側がE・G・マーシャル、弁護士がホセ・ファーラーである。きわめて丹念に作られた作品で、艦艇などの細部の描写もすばらしいが、状況に応じて揺れ動くような心理描写に見ごたえがあり、それを支える俳優たちの演技がまたすばらしい。
ケイン号の叛乱 [DVD]

Tetsuya Sato