2011年12月5日月曜日

ジョン・フォード『荒野の決闘』(1946)

荒野の決闘(1946)
My Darling Clementine
監督:ジョン・フォード


カリフォルニアを目指してキャトル・ドライブをしていたアープ家の四兄弟は途中、アリゾナのトゥームストーンで牛を奪われ、末弟を殺される。そこでアープ兄弟は保安官となってトゥームストーンにとどまり、クラントン一家の父親と四兄弟に牛泥棒と殺人の嫌疑を向けるが、そうしているあいだにドク・ホリデイを追って東部からクレメンタイン・カーターと名乗る婦人が現われ、その清楚な姿と才色兼備な様子にワイアット・アープは一目ぼれする。
ゆったりとした、おおむね静かな映画である。酒場、床屋、ホテル、馬車を連ねて日曜礼拝に進む人々、青空の下でのカントリーダンス、などの情景の奥行きのある映像がすばらしい。風景は平常の地平へと広がっていくのである。そして同じ広がりがクライマックスの決闘の場面では異常なまでの緊張感を生み出している。時間と空間がきちんと演出されているのだ。映画は保安官ワイアット・アープの揺れ動く心を淡々と描き、婦人の前でのその不器用ぶりと時折見せる唐突な思いきりがなんとも切なくてよろしい。ヘンリー・フォンダの演技はどこか飄々としていて人間味があり、対するクラントン一家の牢獄のような重苦しさと対照的である(なにしろこちらの家の兄弟は鞭を握った父親にすっかり自由を奪われていて、自分で酒を注文することもできないような有様である)。 
荒野の決闘 <特別編> [DVD]


Tetsuya Sato