2011年12月25日日曜日

ジョージ・キューカー『フィラデルフィア物語』(1940)

フィラデルフィア物語(1940)
The Philadelphia Story
監督:ジョージ・キューカー


フィラデルフィアの上流階級の娘トレイシー・サマンサ・ロードはある日、夫のC・K・デクスター・ヘイヴンを家から追い出す。それから二年後、実直な男ジョージ・キトリッジとの再婚を控えたトレイシー・サマンサ・ロードの前に前夫C・K・デクスター・ヘイヴンが姿を現わし、一組の男女マコーレー・コナーとエリザベス・インブリーを紹介する。二人は南米にいるトレイシー・サマンサ・ロードのの兄の親友という触れ込みであったが、その正体はすっぱ抜き専門の三流誌「スパイ」の記者と写真家であり、上流階級の結婚の裏側を暴くという秘密の使命を帯びていた。そしてその秘密の使命はC・K・デクスター・ヘイヴンの口からすぐに漏れてしまうので、ロード家の人々は記者の前でアホウな上流階級のふりをし始める。
こなれた脚本とスピーディな演出が心地よいコメディである。冒頭、キャサリン・ヘップバーン扮するトレイシーがケイリー・グラント扮するデクスター(C・Kはなんの略だ?)を追い出す場面でまず驚かされる。台詞がひとつもないのである。そして話はそのまま二年後に吹っ飛び、トレイシーを女神のように崇める婚約者キトリッジと本業は作家なのにと腐りまくる記者マコーレーが登場し、トレイシーの家族や親戚なども現われて全員で景気よくしゃべりまくる。前夫ケイリー・グラントはふてぶてしく前妻トレイシーの欠陥を指摘し、作家マコーレーは階級差の問題を暴き立て、トレイシーの妹ダイナは暗躍し、ストレスを感じたトレーシーは結婚式の前夜祭でシャンパンを飲みまくり、結婚式の当日にはひどい二日酔いを抱えている。キャサリン・ヘップバーンの好調ぶりがなんといっても見ていて楽しい。ケイリー・グラントの魅力はわたしにはいまひとつ不明だが、記者マコーレーに扮したジェイムズ・スチュアートは実にいい感じで、そのジェイムズ・スチュアートが酔いつぶれたキャサリン・ヘップバーンを抱えて「オーバー・ザ・レインボー」を歌うという名場面も登場する。こまっしゃくれた妹ダイナに扮したヴァージニア・ウェイドラーがまた楽しかった。
フィラデルフィア物語 [DVD] FRT-073

Tetsuya Sato