2011年12月1日木曜日

ジョン・フォード『駅馬車』(1939)

駅馬車(1939)
Stagecoach
監督:ジョン・フォード


1885年のアメリカ。アリゾナのトントから途中二つの宿駅ドライ・フォークとアパッチ・ウェルズを経由してニューメキシコのローズバーグまで駅馬車が走る。道中ではアパッチが不穏な動きを示しており、何が起こるかはわからない。乗客は六人。ヴァージニアから来て騎兵隊にいる夫の大尉を訪ねようとしている臨月の女、その女の護衛を買って出る元南部連合将校の賭博師、酒の行商人、トントの町から追放を言い渡された飲んだくれの医師、同じく追放を言い渡された売春婦、そして町の銀行の頭取である。御者は仕事があることを喜んでいるが、結婚相手のメキシコ女が大家族で食わせるのが大変だとぼやいている。御者席の横にはトントの町の保安官が座る。保安官は馬車の護衛役として乗り込んでいるが、実は別の用件を携えている。実はこのとき元牧童で殺人の罪で服役していたリンゴ・キッドが脱獄し、宿敵プラマー兄弟と対決するためにローズバーグに向かっていたが、保安官は対決がおこなわれる前にリンゴ・キッドを捕えるつもりであった。とはいえ、それは単に脱獄囚として捕えるのではなく、友人の息子であるリンゴ・キッドを無謀な行為から救うためで、保安官の考えとしてはリンゴ・キッド一人に対してプラマー兄弟三人という決闘は無謀であると思えてならなかった。そしてそのリンゴ・キッドはトントの郊外で馬を失って立ち往生し、馬車の七人目の乗客となる。護衛の騎兵隊はドライ・フォークで引き返し、ドライ・フォークにもアパッチ・ウェルズにも頼みの騎兵隊は存在しない。それどころかいよいよ動静は不穏になり、リンゴ・キッドは彼方の丘にのろしを認め、無防備のまま出発した駅馬車にやがて騎馬のアパッチ族が襲いかかる。
演出はテンポが速く、余計なところで足をとめようとはしないので、見ていてすこぶる心地がよい。登場人物は社会の上中下とまんべんなく配置され、それぞれに個性的で奥行きがあり、ダイアログは軽快でほどよくユーモアがにじませてある。強いて言えばリンゴ・キッドというキャラクターがやや唐突だが、明確なヒロイズムを与えるためだと割りきれば瑕疵というほどの瑕疵ではないだろう。駅馬車襲撃の場面はきわめてハイテンションで盛り上がる。
駅馬車 [DVD]


Tetsuya Sato