2011年12月21日水曜日

ヴィクター・フレミング『我は海の子』(1937)

我は海の子(1937)
Captains Courageous
監督:ヴィクター・フレミング


大富豪のひとり息子で十歳になるハーヴェイ・チェインは母親のいない環境で父親に甘やかされて育った結果、傲慢な上にいささかたちの悪い子供になり、父親の権威を傘に同級生に恫喝を加えたり、教師には賄賂を贈ったり、そのことで叱られても悪びれもせず、処罰を受けると嘘を言って父親に泣きつく、といったことをおこなったため、ついに停学処分となって父親とともに豪華客船でヨーロッパへ旅立つ。しかし船内における悪行の報いにあって大西洋に落下し、たまたま通りかかった漁船に拾い上げられる。ハーヴェイはここでも父親が大富豪であることを訴えてただちに自分を父親の元へ送り届けるように要求するが、船はタラやオヒョウを求めてグランドバンクスへ向かう途中であり、したがってあと三ヶ月は陸に戻らないと告げられる。船長によって強制的に雑役係に雇い入れられたハーヴェイは必至の抵抗を試みるものの、やがて乗り組みの漁師マニュエルと心を通わせるようになっていく。
原作はラドヤード・キプリングらしい。ハーヴェイを演じた子役フレディ・バーソロミューは傲慢でへこたれないところから心に傷を負って泣き叫ぶところまで、自然な感じで演じていた。スペンサー・トレイシー扮するマニュエルのおおらかではあるが筋の通った人物像も忘れがたい。漁船"We're Here"号の少々頑固な船長がライオネル・バリモアが実にいい感じで、その息子がミッキー・ルーニー、ハーヴェイの父親チェイン氏がメルヴィン・ダグラス。丁寧に作られたいい映画である。演出はよどみがなく、しかも温かみがあって、見ていて気持ちがよいし、スクーナー型帆船"We're Here"号が感動的に美しい。走りっぷりもダイナミックで、最後のほうでは漁船同士のチキンゲームとでも言うべき珍しい場面も登場する。延縄漁法の様子なども面白かった。 
我は海の子 特別版 [DVD]

Tetsuya Sato