2011年11月7日月曜日

わたしなりの発掘良品『ワイルドレンジ』(2003)

ワイルドレンジ(2003)
Open Range
2003年 アメリカ 139分
監督:ケヴィン・コスナー

牛を追って現われた二人の善良なカウボーイが町を仕切る悪い牧場主と対決する。善良なカウボーイがどのくらいに善良かと言うと、溺れかけた犬を助けるくらい善良で、悪い牧場主がどのくらい悪いかと言うと、その子分は平然と犬を殺すのである。ストーリーも善悪の基準もいたってシンプルなことになっている。
カウボーイのうちの一方がロバート・デュバルで、こちらは老齢に達して気が短くなっていて、しばしば無謀に走る傾向がある。もう一方がケヴィン・コスナーでこちらは南北戦争の傷を心に負っていて、習性としてすぐに銃を抜くことを口に出すほど恥じている。そしてケヴィン・コスナー扮するこのカウボーイが町で出会って一目ぼれする行かず後家がアネット・ベニングで、兄の医者を手伝って小じわも隠さずに凛々しく働いているのである。ケヴィン・コスナーとロバート・デュヴァルの二人の関係が面白く、特にロバート・デュヴァルが実にいい味を出している。カルガリーでロケしたという風景はひたすらに雄大で美しく、淡々とした静かな描写が丁寧につむがれ、クライマックスのガンファイトはかつて見たことがないほど迫力があり、しかも徹底してリアルに描かれる。もちろん現実のガンファイトのリアリティを知っているわけではないけれど、刻々と状況を変えながら無数の弾が飛び交うこの場面はたいへんな説得力を備えていた。決闘の前に遺書を残し、どうせ死ぬなら甘い物が食べたいなどと言って雑貨屋までチョコレートを買いに行くあたりも人間の心理としてリアルに見えたのである。ガンファイトからラストに至るまでの経過はやや冗長になっているが、これはここでおこなわれるガンファイトの性格、つまり実はカウボーイたちが選択した結果ではなくて、住民による暗黙の決定であったという気配があって、それ自体を主人公たちのクライマックスに配置できなかったところに理由があるのではあるまいか。バランスを考慮した結果と考えるのか、後ろが長すぎると考えるのか、見るひとによって判断は異なることになるだろう。とはいえ見どころの多い力作である。 
ワイルド・レンジ 最後の銃撃 [DVD]

Tetsuya Sato