2011年10月10日月曜日

『三銃士』公開までもう少し。ポール・だめなほうの・アンダーソンはだめなのか?

イベント・ホライズン(1997)
Event Horizon
宇宙船に「事象の地平」などという名前を付けて飛ばしたらろくなことが起こるわけがなかろうというものである。人類最初のハイパードライブ搭載宇宙船イベント・ホライズンが太陽系外縁で消息を絶ち、数年後に戻ってくる。ローレンス・フィッシュバーン率いるレスキュー隊が科学者サム・ニールを乗せて調査にいくんだけど、イベント・ホライズンは木星(だったかな)軌道面のかなり低いところを漂っているので必然的に惑星大気現象の影響を受けることになり、ドッキングするために接近していくと雲が押し寄せてきて雷鳴が轟き稲光が走り、窓には霜が張りついてガラスを雨が叩くのである。イベント・ホライズン号が修道院の回廊のような形をしているので、これはもうどこかのゴシック・ホラーそのまんま、ということになっていて、それを宇宙空間で強引にやってしまうところがまずすごい。ドッキングを済ませて乗り込んでいくと乗員が全員消えている。そして宇宙船のそこここで怪異が起こり、いない筈の人影が見えたり亡霊が出現したりということになってきて、いったいこの宇宙船はどこへ行ってどこから帰ってきたのかと調べ始めると、なんと、という内容である。後半はイベント・ホライズン号に取り憑かれた科学者サム・ニールの独演会となり、変な役者だとは思っていたが自分の目玉くり貫いたりして実に嬉しそうに暴れまくる。美術もすごいし、もうこれは大傑作である。 
イベント・ホライゾン [DVD]





ソルジャー(1998)
Soldier
結論から言えば決してはずしはしなかった。それなりに見応えはある。廃棄物惑星という設定とロケ効果は生かされているし、美術もSFメカも悪くなかった。カート・ラッセルという一種のデクノボウ的キャラクターをうまく逆用していたと思うのだが、残念ながら最強を誇る特殊部隊の面々がへっぴり腰だったのである。武器を持って歩いていてもどこか腰が引けていて、慣れてないなという感じがして、そのあたりがうまくごまかせていればもっとメリハリのある映画になったという気がした。それにしてもこの人たちは随分遠くまでゴミを捨てにいくんだねえ。 
ソルジャー [DVD]





バイオハザード(2002)
Resident Evil
カプコンのゲーム『バイオハザード』の映画化。ラクーン・シティにあるアンブレラ社の地下研究所でバイオハザードが発生し、コンピューターによって研究所は封印、職員全員が抹殺される。アンブレラ社の特殊部隊は研究所へ侵入してコンピューターをシャットダウンするが、それと同時にドアのロックが解除されて歩く死人が動き始める。ゾンビ描写はゲームどおりにおおむねロメロ調、ただし内臓はまったく見せずにお上品にして、ミラ・ジョヴォビッチ主演のアイドル映画になっているようだ。その範囲では頑張っているけれど、全体に要領の悪い展開で、話が切れ切れになっているような気がした。この100分は少々つらい。 
バイオハザード〈廉価版〉 [DVD]





エイリアンVS.プレデター(2004)
AVP: Alien vs. Predator
ピラミッドのような形状の古代の遺跡が南極の地下600メートルで発見され、調査隊が送り込まれるが、そこが プレデター の管理地で、しかも エイリアン が飼われていたのでえらい目に遭う。はっきり言ってネタだけの監督ポール・W・S・アンダーソンらしい作りで、遺跡の発見から調査隊の派遣までのプロセスは衛星軌道からネパール、メキシコ、さらに南極と場面が自在に動いてテンポがよいが(無人の捕鯨基地の話などもそれなりに雰囲気が出ていたと思うものの)、そのあとの要領が悪くてちょっといただけない。たぶんプレデターに襲わせるためだと思うけれど、掘削作業員までがレーザーポインター付きの自動火器で武装しているのはどうかと思うし(そんなにやばい仕事なのか?)、フェイスハガーからエイリアンまでのプロセスはあまりにも簡略化されていて、特にここはかなり不満であった。それに現地で一日足らずのタイムスパン、というのは無理があろう。女性が生き延びてプレデターと共闘するという設定は前に読んだコミックのバージョンとよく似ているが、話の出来はあちらのほうがなにやら渋くて上であった。全般に美術などは頑張っているが、ピラミッドの様式がエジプトとカンボジアとアステカをあわせて、てのは、ちょっとどうも。 
エイリアンVS.プレデター [DVD]





デス・レース(2008)
Death Race
『デス・レース2000年』のリメイク、ということになっているが、オリジナルの陽気でばかな雰囲気は消えうせて、この近未来はひたすらに暗く、レースに参加するのも単なるアホウの代わりに妙に鬱屈した囚人になり、レース自体も公道レースではなく私企業が運営する刑務所内でのレースになり、レースの参加者は通行人を殺すのではなく参加者同士で殺し合う。つまり、すでに最初の設定の時点でSF系刑務所もののふつうのバリエーションになっていて、公道で通行人を無慈悲にひき殺すというオリジナルのいちばん肝心な部分がしっかりと抜け落ちるのは時代を反映して、というよりも、やはり監督がこっちのポール・アンダーソンだからであろう。リアル版の「マリオカート」(わたし的には「クラッシュ・バンディクー・レーシング」だが)を作りたかっただけなのではあるまいか。そう考えると、たしかに公道レースではステージ、アイテム、ボスキャラ、といった概念を織り込むのは難しかろうと思うのである。そういう意味ではまったく別種のおばかな映画になっているわけだけど、やはり監督がこっちのポール・アンダーソンだからなのか、最後のまとめの部分であきらかな要領の悪さが顔を出し、またしてもネタだけ考えて、あとのことはあんまり考えていなかっただろう、と思わず突っ込みを入れたくなるのである。とはいえ、嫌いな映画ではない。 
デス・レース [DVD]





バイオハザードIV アフターライフ(2010)
Resident Evil: Afterlife
渋谷駅前のスクランブル交差点の地下にアンブレラ社の巨大な地下施設があり、アリスはそこへ潜入してウェスカーと戦い、それから前作でクレアの一行が目指したアラスカへ飛んで記憶を失ったクレアと再会し、飛行機でロサンゼルスへ南下すると刑務所に立てこもる数人の生存者と合流し、そこへアンデッドの群れが押し寄せてくるので沖合に停泊する船に向かって血路を開き、乗船してみるとそこもまたアンブレラ社の施設で性懲りもなくウェスカーがいるのでまた戦う。絵はいちおうできているが、前作以上に無内容になり、どのような意味でも整合性を気にしなくなっているのではないかと疑いたくなる。つまり疑いを抱く暇がある程度に退屈なのである。なにがなんだかわからないけど、テンポだけは速かった、ということであれば、問題はなかったのではあるまいか。 
バイオハザードIV アフターライフ [DVD]

Tetsuya Sato