2011年10月13日木曜日

ニール・マーシャル!


ドッグソルジャー(2001)
Dog Soldiers
イギリス陸軍の一個分隊6名がヘリコプターでスコットランドの森林地帯に降下する。ここで特殊部隊との演習がおこなわれるためであった。兵士たちは重たい装備を担いで森を進み、敵のパトロールの間隙をついて前線へと近づくが、ここで特殊部隊が指揮官一人を残して全滅している場面に遭遇して驚愕する。しかもこの部隊は空砲を詰めた自動小銃ではなく実包を装填したMP5とショットガン、麻酔銃や捕獲用の網などを装備していて演習のためにそこにいたような気配がない。指揮官の大尉は重傷を負って得体の知れないことを叫び、無線は届かない状態なので単独で事態を収拾しようと試みていると、早くも日没が訪れる。すると森の木陰から怪しい影が近づいてくるので分隊は軍曹の命令一下撤収にかかり、やがて怪物と遭遇する。兵士の一人がばらばらに千切られ、軍曹もまた重傷を負い、分隊は一軒の農家に逃げ込むが、間もなくそこも怪物によって包囲される。
スコットランドの森では満月の晩に凶暴無比な狼男の群れが徘徊していて、モダンな陸軍がそれと戦うという話である。とはいえ、安手の作品ではない。まず軍隊の描写に手間がかかっていて、実にそれらしくできている。軍隊がちゃんと軍隊に見えるし、わずか6名の分隊が損害を出しながらも最後まで軍事行動を続けるところに感心した。主題がシンプルではっきりとしていて、作り手がその主題に対して忠実だからであろう。後半、状況が乱戦気味になってくると脚本や編集までが少々乱戦気味になってくるのが気になったが、映像にリアリティを与えるために手間を惜しんでいないところに好感を持った。
ドッグ・ソルジャー デラックス版 [DVD]





ディセント(2005)
The Descent
サラは交通事故で夫と娘を同時に失い、それから一年後、心の傷をいやすために女ばかり六人のパーティでアパラチア山中の洞窟に挑戦する。ところが途中、落盤で退路がふさがれ、しかももぐった洞窟が役所に申請した洞窟とは異なることが判明し、出口を探してさまよううちに地底で闇の世界に適応した亜人類の群れと遭遇する。
監督、脚本は『ドッグ・ソルジャー』のニール・マーシャル。前ぶりの部分が余計に見えたり、人物関係や行動がひどく不自然に見えたりして中盤あたりまで妙に収まりが悪かったが、ヒロイン、サラが唐突に居直って思うままに行動し始めると結果として立ち現れた構築性が前段の収まりの悪さを吸収する。良し悪しはともかくとして、とにかく演出力は確かだと思う。で、『ディセント』というタイトルは洞窟に下りていくことだけではなくて、登場人物の精神的な下り坂も意味していたようで、あれやこれやコードを持ち出して検証しようとするとかなり面倒になりそうな内容である。
THE DESCENT [DVD]





ドゥームズデイ(2008)
Doomsday
疫病の発生によってスコットランド全土が封鎖され、それから四半世紀が経過してロンドンに同じ疫病が出現する一方、スコットランドに生存者がいることが判明し、英国政府は抗体を得るためにスコットランドに特殊部隊を送り込むが、そのスコットランドには生存者が単にいるだけではなくて山ほどもいて、町ではパンクをやっていたり湖畔の城では君主をやっていたりするのである。基本的な設定は『ニューヨーク1997』で、そこから先はやり放題という感じだが、話はつまり、スコットランドは25年も放っておくと歴史を1000年ほどもさかのぼる、ということである。アイデアがいまひとつ映画に収まりきらないどこか間抜けな雰囲気は買いだが、『ドッグソルジャー』、『ディセント』と来て、ここに至ってニール・マーシャルの良くも悪くもジョン・カーペンター的な本性がはっきりと現われてきたような気もしないでもない。それがこれからどこへ転がっていくのか、まだ油断のできないところであろう。 
ドゥームズデイ アンレイテッド・ヴァージョン [DVD]





センチュリオン(2010)
Centurion
ブリテン島の北限にあるローマ軍の駐屯地がピクト人の襲撃を受け、ただ一人生き残った百人隊長クィントゥス・ダイアスはピクト人の捕虜となり、ピクト人の村から逃れてピクト人討伐のために出動した第九軍団に救われるが、その第九軍団はピクト人の奇襲を受けて全滅し、クィントゥス・ダイアスほか生き残った六名の兵士は捕虜となった将軍を救うためにピクト人の村を目指し、村には潜入するものの将軍の救出には失敗し、ピクト人の王ゴーラコンの息子を誤って殺すので、報復を誓うピクト人の一団に狙われながらローマ軍の陣営を目指す。つまり『ドゥームズデイ』とほぼ同じ話を二世紀のスコットランドでやっているのである。仕上がりを見ていると、もしかしたらこちらのほうをやりたかったのかな、という気がしないでもない。プロットはきわめてシンプルだが状況はそれなりに作り込まれ、アクションシーンはけっこうな迫力になっている。ローマ軍の全滅ぶりもなかなかにすごい。 
センチュリオン [DVD]




Tetsuya Sato