2011年10月31日月曜日

ぞんびえいが #4 その他

ザ・コンヴェント(2000)
The Convent
監督:マイク・メンデス
1960年。女学校付きの修道院の聖堂で聖餐式がおこなわれている最中にくわえタバコの女学生がガソリンタンクをぶら下げて乗り込み、司祭、修道女を皆殺しにして火を放つ。それから40年後、頭の空っぽな大学生の男子四人、女子三人が廃墟となった修道院にもぐり込み、たまたま居合わせたデイリークイーンのアルバイトが悪魔崇拝の儀式をおこなった結果なのか関係ないのか、女子大生の一人がゾンビ状態となり、まわりの人間をかみ殺してゾンビの輪を広げ、童貞の男の子をいけにえに改めて悪魔崇拝の儀式に取り掛かるので、ただ一人逃げ出した女子大生が40年前の事件を引き起こした女子高生(当時)に救いを求め、そうすると現在五十代のおばさんが革ジャンをまとい、ショットガン片手にバイクにまたがって突っ込んでいく。
突っ込んでいくのがエイドリアン・バーボー、というのがおそらくミソなのであろう。演出は全体に単調ではったりに乏しく、リズムが悪い。ゾンビのメイクを蛍光塗料でほどこし、そこにブラックライトをあてて独特の雰囲気を出しているが、それはそれで結果としては、やはり安っぽい。ゾンビ状態になった尼僧たちがそのまんまの状態で従来どおり授業を続けていたりとか、けったいなコミック演出に笑えるところがあるものの、作り自体の整理の悪さ、というか、だらしのなさは覆いようもなく、そこを笑って見過ごすのか、眉をひそめるのか、かなり難しいところではある。
ザ・コンヴェント~死霊復活~ [DVD]





チルドレン・オブ・ザ・デッド(2001)
Children Of The Living Dead
監督:トー・ラムシー
かなり頭が痛い。冒頭のゾンビ狩りは『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』を思い出せるが、それでゾンビがはびこるということもなくて、それから十数年後、コンサートに行く途中の若者たちを乗せたバンが崖から転落し、死んだ若者たちはゾンビとなって蘇る。で、どうやらこのゾンビどもは地元で都市伝説と化している連続殺人犯に操られていて、その殺人犯自身がそもそもゾンビのような化け物で、物陰で悪事をたくらんでいるようなのである。トム・サヴィーニは冒頭にちょっと顔を出しているだけ。昼飯つきで呼ばれたから出た、という感じであろうか。 




ハウス・オブ・ザ・デッド(2005)
House of The Dead
監督:ウーヴェ・ボル
つまり、ウーヴェ・ボルである。死の島と呼ばれる島でなぜかパーティが開かれていて、そこへダンゴムシ程度の知能しか備えていない若者たちが出かけていって不純異性交友などをしていると、ゾンビが山ほども湧いて出て飛んだり跳ねたりしながら襲いかかってくるので、このダンゴムシ同然の若者たちは密輸業者の船長から武器を提供されてゾンビと戦う。目の前に船があるんだから、さっさと逃げりゃいいじゃねえか。
シューティング・ゲームの映画化だという。だから、というわけでもあるまいが、映像的に説明すべき状況はほとんどが台詞で説明され、延々と続くとにかく長いシューティング場面ではゲームのなかの粗いポリゴンの映像が頻繁にインサートされて、これがうざい。そしてかっこいいとでも思っているのか、カメラはむやみとぐるぐるとまわり、このぐるぐるとまわっている時間だけでも頭を使えばもう少しましな映画になったのではないかと思えてならないような次第である。脚本は最低、演出も最低、音楽も最低。冒頭、密輸船の船長役でユルゲン・プロフノウが顔を出し、その顔を見た若造が「Uボートの艦長?」と訊ねる間抜けな場面には悲しいやら頭にくるやらでかなり不快な思いをした。
ハウス・オブ・ザ・デッド [DVD]





デッドマンソルジャーズ(2006)
Horrors of War
監督:ピーター・ジョン・ロス、ジョン・ホイットニー
1944年8月。アメリカ軍の小部隊がドイツ占領下のフランスの森を進んでいくと全滅しているドイツ軍の小部隊に遭遇し、アメリカ軍の小部隊もまた間もなくドイツ軍の小部隊を全滅させた原因と遭遇する。これがなぜか狼男で、この狼男と遭遇した結果、フランス人の女性を暴行した上に射殺するような大尉は死亡、中尉と軍曹が生還を果たし、本隊に戻って報告すると、ほかでも同様の事件が起こっていると知らされる。つまりドイツ軍はなにか新兵器を開発しているようなので、ということで、翌月、その新兵器に関わりのある人物を確保するために再びアメリカ軍の小部隊がドイツ占領下のフランスの森を進んでいくと廃虚のような場所(いや、なんのことはないオハイオかどこかの廃工場)で秘密の研究がおこなわれていて(しかも遠慮がちに隅のほうの一室だけで)、ドイツ軍が薬物を使ってスーパーソルジャーを作っていた、ということがあきらかになるわけだけど、じゃあ、さっきのあの狼男はなんだったのか、という点については説明がなくて、説明をしている科学者がいきなりうわおうとか言って一昔前の安っぽいゾンビのようなものに変身して襲いかかってくるので、最初の狼男に噛まれていた軍曹が耳をつんつんと立てた狼男の姿になって格闘を始め(でも、いつ変身したのだろう)、それでも勝てないので、スーパーソルジャーにはスーパーソルジャーだ、ということでアメリカ軍の大尉が自分のからだに薬品を打って、一昔前の安っぽいゾンビのようなものに変身して一昔前の安っぽいゾンビのようなものと戦う。
オープニングタイトルにはいくらかのセンスが感じられたものの、コストパフォーマンスの悪いキャラクター、ねぼけたような脚本、リアリティの乏しい演出は見る者を少なからず退屈させる。かなりの低予算で、基本的には森のなかを数人の兵隊がうろうろしているだけ(しかも銃を持ち慣れていない)、戦闘場面でも両軍をあわせて二十人を越えることはない(とはいえ、その状況で回想シーンでは必要もないのにDデイをやり、どこからか野砲や装甲車まで持ち出してくる根性は認めなくてはならないが)。
デッドマン・ソルジャーズ [DVD]





ダーク・オブ・ザ・デッド(2008)
Virus Undead
監督:ヴォルフ・ヴォルフ
鳥インフルエンザのワクチンが人間の体内で鳥インフルエンザと結合してなんだかとんでもないものになり、発症すると吹き出物だらけのゾンビのような状態になる、というドイツ製の事実上のゾンビ映画。思いつき自体は決して悪くはないものの、アイデアをそこから先へ練り上げていく体力はない。だから思いつきは思いつきで終わり、思いつきが思いつきで終わる程度の体力のない連中がやっているので状況にも面白みがなく、つまり医学生が三人で田舎の屋敷にやってきて地元の女の子二人とパーティをやっていると味噌っかすの学生一人が相手がいなくて余計なことをし始めて、そのまわりでは早くも患者だらけになっていて、といういつもの展開に終始する。もちろんそれで上手ならば文句はないが、カメラワークは鈍感だし、ダイアログは間抜けだし、いらないことに手間をかけるし、つまりへたくそなのでやっぱり文句が出るのである。 
ダーク・オブ・ザ・デッド [DVD]





レディオ・オブ・ザ・デッド(2009)
Dead Air
監督:コービン・バーンセン
ラジオのDJが自分の番組でおしゃべりをしていると電話で事件を知らせる声があり、テレビを見ると全米で同時多発テロがあって、謎のウィルスが放出されてウィルスに感染した人間が目から血を流しながら人間に襲いかかっているようなので、ラジオのDJは番組からリスナーに訴えて情報を集め、自分の家族の安否を確かめるためにパートナーをバイクで町へ送り、その様子を実況放送するなどのことをしていると、そこへウィルスを流したテロリストが一人でピストルを構えて押し入ってきて、事件はイスラム教徒のしわざであり、さらに核爆発の危険があり、放出されたウィルスはFBIが開発したものであるとラジオで話すように要求し、DJがその理由を訪ねると憎悪をあおり、アメリカ人の憎悪をアメリカ政府に向けるためであるとテロリストが説明し、そのテロリストもまたウィルスで凶暴化したアメリカ人によって分相応の最期をとげ、しかしテロリストは血清を残すので、凶暴化した人間がウィルスの効果で死に絶えると番組のプロデューサーはWHOに血清を渡し、DJは家に戻って生き延びた妻子を抱きしめる。現代アメリカにおける生存の不安を訴えようとしているらしいが、過剰なメッセージ性は作品を幼稚に見せるだけだし、ダイアログがそもそも意図に追いついていない。状況をラジオ局のスタジオに限定するというアイデアは決して悪くはないものの、おそらくは想像力の不足から限定しきれないことになり、現場の状況に話が移ると暴徒の群れが車の途切れたタイミングで道に現れるといった具合に恐ろしい低予算ぶりが露呈する(全編にわたって交通規制をしている気配がまったくないので普通に車が走っている)。出演者はいちおうベテランをそろえているし、DJを演じたビル・モーズリイの独特の風貌は見ごたえがあるが、暴徒の動きやアクションも含め、演出は二流である(アマンダ・ペイズの亭主だって?)。いっそゾンビまがいの話はやめて、ウィルスのせいで全米の市民がいっせいに本音をしゃべるようになり、番組に電話をかけてきて恥ずかしいことをしゃべりまくる、といった内容にでもしたほうがラジオ局という設定を生かすことができたのではあるまいか。ウィルスの効果が消えたところでみんなで一緒に恥じ入れば、おそらく結論は一緒であろう。 
レディオ・オブ・ザ・デッド [DVD]

Tetsuya Sato