2011年10月17日月曜日

わたしなりの発掘良品『セレニティー』(2005)

セレニティー(2005)
Serenity
2005年 アメリカ 90分
監督・脚本:ジョス・ウェドン


500年後の未来。人類は人口過剰となった地球から宇宙へと飛び出し、テラフォーミングを繰り返して人類圏を広げていたが、惑星間に広がる同盟に対して辺境惑星の人々は自治を求め、独立への動きはやがて戦争へと発展し、最後に分離派は敗退する、というのがこれまでのお話らしい。で、その分離派の兵士だったマルカム・レイノルズ船長はぽんこつ船セレニティを率いて反同盟の非合法活動を続けていたが、船医サイモン・タムの妹リバーが同盟の洗脳を受け、同盟の極秘事項を脳に刷り込まれた人間兵器と化していたことから同盟の工作員に追われることになり、ただ追われるのもあれだ、ということで同盟の秘密なるものを確認するために食人族が徘徊する宙域を抜けて謎の惑星ミランダを目指す。
Wikipediaによると2002年から2003年にかけてFOX系ネットワークで15話まで放映され、打ち切りにされた"Firefly"というTVシリーズの映画化である。ちなみに映画化はユニバーサル。後半、ミランダの秘密があきらかになってから演説口調になってくるのと無用の対立と無用と思われるダイアログがいささか目立つのが気になったが、視覚的にもアイデアの面でもこれは拾い物である。まずセレニティのぽんこつぶりが気に入ったし(飛行中になんか変な音がして、あれはなんだとか船内で騒いでいる)、登場人物もおおむね三枚目というのも悪くない。美術もなかなか凝ったものになっていて、辺境植民惑星の繁華街はまるっきり香港だし、全編に漢字と意味不明のカタカナが氾濫しているし、登場人物がときどき中国語をしゃべるというところまで含めて一貫したデザインには感心させられた。人間兵器となった少女リバーの殺陣もよく考えられているし、黒煙をもくもく吐いて突進してくる食人族の戦闘艇は文句なしに見ごたえがあったし、いちおう宇宙空間での大戦闘というシーンもある。DVDに収録されている監督インタビューによると、主流から見捨てられた底辺の人々を描きたかった、ということで、それはそれなりに成功しているのではあるまいか。オリジナルのTVシリーズのほうも見てみたい。 
セレニティー [DVD]

Tetsuya Sato